始まりの日曜日

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始まりの日曜日

 日曜日の午後、昼食の後片付けを終えたひろみは、荷造りに忙しかった。三姉妹はリビングで遊んでいる。 「たけし、花はキティちゃんだからね!」  ソファーに寝そべってテレビを観ている僕に、ひろみからの声がとぶ。 「わかってるよ」  しぶしぶ立ち上がる。せっかくの休みも落ち着かない。 まあいいさ、何せもうすぐ自由な一週間の休暇なのだ。 「ほら、花、パパとトイレいくぞ」  三女の花はトイレトレーニング中だ。寝る時や外出する時はオムツだが、家に居る時は大好きなキティちゃんのトレーニングパンツをはいている。 遊びに夢中だと忘れるらしく、定期的に声をかけてトイレに連れて行く必要があった。 「じぶんで!」  抱き抱えようとすると、花は自分からトイレによじ登り、座った。なんだ、できるのか。 「ママー、できたよー!」  走る花を追いかけ、キティちゃんをはかせる。僕にだってできるじゃないか。  夕方、ひろみの出発の時間。 「桜は大丈夫よね。桃も自分で準備できると思うから。あ、桃の幼稚園セットは隣の部屋ね」  ひろみは僕に信用がないらしく、最後まで忙しない。 「大丈夫だって。気をつけてな」 「本当かなあ。そうそう、大体のことは紙に書いて机の上に置いてあるから。まあ、わからなかったら電話してね」  長女だが甘えん坊の桜は、少し不安そうにしている。 次女の桃は、何ともなさそうだ。 「ママ、バイバーイ」 一番元気に手を振る花は、事情をよく飲み込めていなかった。 「さあ、パパと風呂に入るぞ」 「わあい!」  夜はひろみの用意したご飯を食べ、みんなで早めに布団に入った。隣から三姉妹の寝息が聞こえる。  可愛いもんだな。 子ども達と久しぶりにたっぷりの時間をすごし、幸せだった。
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