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やっとこさ木曜日
『木曜日』の紙はもうあまり見なくても作業できた。
作って食べて片付けて、を3回繰り返す合間に、掃除や洗濯、子どもの世話を挟み込む。家事をそんな風に理解している。
朝食に、昨日の『花カレー』を温め直していると、言い合いが始まった。
「あーあ。やっぱりママがよかったなあ」
「仕方ないでしょ、これしかできないんだもん」
見ると、桜が四苦八苦しながら桃の髪を二つに結んでいる。
「そっか、パパだから仕方ないよね」
「うん、我慢して! でも桃、かわいいよ」
そうか、桜が結んでくれていたのか。
今ごろになって気づく。
いや、それだけではない。
お風呂のあと、三姉妹分のパジャマを用意するのも、幼稚園カバンから洗う物を引っ張り出すのも、トイレットペーパーのありかを教えてくれるのも全部、桜だった。
わがまま盛りの桃も今はおとなしく、
「パパだから仕方ないよね」
の口癖が定着している。
僕の留守番は、三姉妹のおかげで成り立っていた。
朝のルーティーンがすむと、花と公園に出掛けた。留守番四日目にして、初めての公園だった。
「パパ、まてまてー」
追いかけっこの足をふと止めて、同じく公園で遊ぶ男の子が吹くシャボン玉を、羨ましそうに見ている。
今度来るときは、シャボン玉を用意してやろう。
夜は久しぶりにテレビを見た。ソファーに横になるなんて、何日ぶりだろう。
「花、キティちゃん、大丈夫か?」
「うん、だいじょうぶ」
ホッと一息つく。
普段、僕がこうしている時、ひろみは何をしていただろうか。
目に浮かぶのは、家事をする姿だけだった。
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