終わりの金曜日

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終わりの金曜日

 留守番最後の日、一枚残った『金曜日』の紙を見ながら、ルーティーンをこなす。 「どこがいたいですかぁ」 花とお医者さんごっこをしながら考える。  ひろみはすごいな。 いや、違うのか。 ひろみだって同じなのだ。 仕事をしていて、子どもを産んだ瞬間にこの生活が始まったのだ。思い返せば、家に帰ると、晩御飯ができていなかったことも、洗濯物がぐちゃぐちゃだったこともあった。 きっとこの一週間の僕と同じだったのだ。   それを僕は、手伝いもせず、ただ見ていた。それどころか、ちゃんとしろよ、と、腹を立ててさえいた。  子どもができてから、ただ仕事を頑張ってきた。残業も喜んで引き受けたし、飲み会にも積極的に付き合った。家族のためと思って。 それが悪いわけではない。  でも、家ではどうだったか。仕事を言い訳にして、何もしなかったのではないか。 「ちゅうしゃしますね」 おもちゃの注射針は、今の僕には、相当に痛かった。  夜は三姉妹と、『頑張ったパーティー』をすることにした。 どうにかこうにか唐揚げを作って、ブロッコリーとミニトマトで飾った。  三姉妹は最後のパパご飯を喜んで食べてくれた。デザートに、ご褒美に買ったケーキを準備していると、 「パパはこれよね」 桃が缶ビールを差し出す。ジュースとビールと牛乳で乾杯する。 久しぶりのビールはとても美味しく、体に染み渡った。  僕と花がお風呂から上がると、桜と桃が何かしている。 「ママに、お帰りなさいパーティーするの」 折り紙や色テープの飾りが散らばっている。 「よおし、部屋中に飾るぞ!」 「うん!」  みんなでおもいっきり飾りつけをした。
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