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お帰り土曜日
水の音で目覚めた。
ひろみが洗い物をしている。
僕はリビングの床で、三姉妹に囲まれて寝ていた。床には紙くずやクレヨンや、畳まれていない洗濯物が散らばっている。
しまった!
洗い物も、洗濯物も、完璧にこなして、スマートに出迎えるつもりだったのに…
「ごめん、今代わるから」
焦って流し台に歩み寄る僕に、ひろみは洗い物を続けながら
「いいよ、ゆっくりしてて」
と笑った。
夜は冷凍していた『花カレー』を食べた。花は、ママに食べてもらえて嬉しそうだった。
「実はね、あの日、給食もカレーだったんだ」
食べながらポツリと桜が言う。
なんだって?!
給食から朝まで、3食カレーだったのか!
「どうして言わなかったんだ」
僕がきくと、
「だって、花とパパが頑張って作ったんでしょ?美味しかったから、いいの!」
桜が言った。
いつかの夜、カレーを目にした僕は
「今日の昼もカレー食べたんだよな」
と言った。悪気はなかった。
ひろみは、
「あら、そうなの、ごめん」
と謝った。
その時ひろみは、どんな顔をしていただろうか。
どんな気持ちで聞いていたのだろう。
どんな気持ちで謝ったのだろう。
「あー、パパ泣いてるー」
桃にみつかる。
「おかしいな、辛すぎたかな…」
甘口の『花カレー』を食べながら、涙が止まらなかった。
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