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魔女がくれたイス
ある日の夕方、仕事帰りの僕は、道ばたでうずくまっているおばあさんを見かけた。
真夏なのにおばあさんは、真っ黒なマントを着ている。
「大丈夫ですか」
僕がそう声をかけると、
「大丈夫じゃないから、うずくまっているんじゃ」
とおばあさんはいった。
「救急車を呼びましょうか」
ときくと、
「腹が減って、死にそうなんじゃ」
とおばあさんはいう。
僕は近くにあったコンビニに行き、おにぎりを二つ買っておばさんにあげた。
おばあさんは、おいしそうにおにぎりをペロリとたいらげた。
「ありがとうよ。これで動ける。実はな、ワシは魔女なんじゃ……。あんたに、とっておきのお礼をしてやろう。あそこのイスを持ってきなさい」
おばあさんが指さす方を見ると、汚い木製のイスがゴミ捨て場においてある。
僕がそれを持ってくると、おばあさんは何やら呪文を唱え始めた。
「このイスはあんたの願いを三つかなえてくれる。それが、ワシの恩返しじゃ。大切に使うんじゃよ」
そういったあと、おばあさんは近くにあった汚いほうきにまたがり、
「ブワン」という音とともに空に舞い上がって消えた。
とつぜんのことに、あっけにとられた僕はポカンと口を開けてずっと空を見つめていた。
その後、イスをアパートに持ち帰った。
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