魔女がくれたイス

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 ある休日、アパートでイスに座りながら考えた。 「世界中を旅することができたら、どんなにいいだろう」  すると、イスがガタガタとゆれ、僕の体といっしょにうかんだ。  さらに、開いていた窓の外から外へ飛び出す。  僕はイスに座りながら、空にうかんでいた。  下を見ると、街が小さく見える。人々はアリのように小さい。  なんだか、自分の悩みがちっぽけに思えてきた。    中国の万里の長城、  エジプトのピラミッド、  アフリカのライオン・ゾウ・キリン・カバ、  北極のオットセイやペンギン、オーロラ……   僕は世界中の有名なものをじっくりと見ることができた。  心がこんなにウキウキ、ワクワクするのは何十年ぶりのことだろう。  でも、もうそろそろ会社に行かなくっちゃ、クビになるぞと気がづいた。
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