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「レイが…思うままでいいと思うよ。」
「思うまま?」
「うん。見せようとして作る姿は所詮ポーズでしかないから…
彼女を思う気持ちを素直に表現して…」
わかり辛いだろうか。
どんなふうに言えばいいか表現に困った。
「…そうですね。」
レイは考え込むように視線を床に落としている。
「そっちどう?こっち準備できたけど、テスト行ける?」
離れた場所にいたコウタがカメラを手にレイを呼んだ。
そうだ。
「もしかしたら…コウタにはそれ、撮れるかも。ホントのこと知らなくても。」
顔を上げたレイと目が合う。
そう、コウタなら。
今のレイの心が見えるような画を。
今日のレイを撮るのに
コウタは最も適任だとその時あらためて気付いた。
「コウタさんとは…親しいんですか?」
「え…?」
私はどう返していいか考えあぐねて黙り込んでしまった。
素直に、そう、と言っておけば良かったのに、
変な間を取ったために逆に勘ぐられてしまうかもしれない。
そんな私の思いを察してか少しあわてた様子でレイは言った。
「じゃあ、今回やっぱりコウタさんにお願いして良かったです。」
レイが話しを元に戻してくれたことでほっとして胸を撫で下ろす。
「そうかも。それに…」
コウタがもし、
レイのその胸中を察してありのままを撮ろうとしてくれるならば、
私も今日はレイのために、
ボスを良く知る、
ボスと同世代の女である自分が
感じる得るすべての感覚で挑もう、
そう思っていた。
「彼女には素直にぶつかる感じのがいい。あの人ってそういう人だから。」
私の言葉にレイはなぜか、
少し寂しそうに笑ってみせた。
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