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この空は、 天に上る時に渡る空 なのだ、と気付いた。 きっと、コウタの息子、亮太が上った空だ。 涙が溢れる。 決して悲しいのではなく、 ただなぜか溢れ出てくる。 しばらく動けないままその空に見下ろされていた。 そのうちだんだんと暖かいものに包まれるような感覚を覚える。 いつか、 この空を行くときが私にも来る。 その日までを 自分に正直に、 嘘偽りなく、 精一杯生きたい。 笑ったり、 悲しんだり、 苦しんだり、 感じ得る全ての感情を知りたい。 かかわるどんな些細な出来事も見逃さず、 私が私で生まれてきた 意味を感じたい。 それが生きるということならば。 誰も居なかったはずの館内に何人かの人影が見えた。 このブースにも人が近付く気配がする。 まだまだここに佇んでいたい気持ちにキリをつけて、 次の部屋へ進んだ。
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