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前日の夜遅くから降りだした雨が止んで 雲の隙間からうっすらと陽射しが漏れ出した頃、 レイはやって来た。 パウダーブルーのオックスシャツの上に 羽織ったネイビーの()れたコットンジャケット。 履き込んだデニムとキャンバスのスニーカー、 そして眼鏡。 最近のグラビアで見るモデル顔のそれとは違い、 背がひょろりと高いこと以外は一見目立つところもこれといって無い、 どこにでもいそうないたって普通の青年だ。 アトリエで緊張気味に待ち構えていた私はそんなレイの姿に気が抜けた。 「お久しぶりです!」 ドアを開け迎い入れたレイは、 子供のような笑顔で歩み寄ると上から覆い被さるように私を抱きしめた。 一瞬身体を強張らせてしまったが、それでも両腕をレイの身体にまわしその背を軽く叩いた。 一緒に仕事をしていた時は「ご挨拶」だったハグ。 なぜかぎこちなく身体が離れた。 「ほんと久しぶりだね。元気そう。」 精一杯、自然を装うがまともに顔が見られない。 「カズさんも。元気そうですね。少し…太りました?」 レイは一歩下がり、私を上下に舐めるように見て、意地の悪そうな顔をしている。 「ったく!にくったらしい!」 再会から5分経たずして、 あの頃の空気感に引き戻された。 緊張がふんわりと解けていく。 いつの間にか以前のように顔を見合わせ、 2人で声を上げて笑っていた。
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