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8月某日13時。見慣れない風景の中で、運送会社のトラックを見送った。
「もう高校生だろ」とか言われて親に荷物運びを手伝わされたので、腰が痛い。
蝉がもうけたたましく鳴いている。前住んでいた所はかなり北の方だったものだから、これだけ五月蝿いのは新鮮だった。もうちょっと落ち着かないものか、とぼやく。
…新学期まではあと2週間くらいあるのか。
学校側は、転校したての林檎に夏期休暇の課題をさせるつもりはないみたいで、休み明けまでは完全にフリーだった。
物分かりの良い教師で助かった。俺はそんな無駄にカロリーを消費するものごめんだ。
初めての引っ越しだが、友人との別れ際は思ったよりあっさりしていた。
携帯電話の番号交換はしているし、林檎が期待していた「2度と会えないかも!!悲しい!!」なんてことはなく、「あ、引っ越しちゃうんだ。またね」みたいな、まるでクラスで飼ってたメダカが死んだ時みたいな軽い感じだった。
泣くような慈悲深い奴はもちろんいない。
欠伸、自分の部屋に戻り、重さでミシミシいっている椅子にもたれかかる。
当時は勿論悲しくなった。しかしよく考えれば別に自分もあいつらに思い入れなどなかったので気にするだけ無駄だと思った。
それにしても暇だ。この2週間何をすれば良いと言うんだ。勉強か。勉強なのか…。
うぐー、と呻き声を上げて林檎は床に寝転んだ。
見上げた逆さのカレンダーは、まだ真っ白だった。
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