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これだから夏は日が長いのが困る。
熱中していたようで、気づけば6時半になっていた。といっても最後の方はほぼ公園で猫と戯れていたので大したことはできていない。
得たものといえば無駄なスケッチブックの消費くらいだ。
此れがあと2週間近く続くと思うと精神的にくるものがある。
もっと面白い事を探すしかないか、と思った。
そうやってボケッと元の無人路地を歩いていると、足元に何かがぶつかった。
コツンという感じではなく、ぶにゅっとしている。
不審に思い下を見た。
踏んだ物が少し動く。自分は生き物を踏んでるみたいだった。
…まさか、人?
「うわぁぁぁぁあ!!何だこれなんだこれナンダコレ!!」
思わず普段出さない大声が出てしまった。
助けを求めようとしたがこのシチュエーションだと間違いなく踏んでいる自分が加害者だ。迂闊にポリ公など呼べたもんじゃない。
踏んだのは…やはり人みたいだっだ。おそるおそる足をどけてしゃがみこみ、その様子を確認する。
目の隈が凄い。息が安定している所をみると命の危険というよりは疲れて寝ているようだった。
全身黒のジャージを着ていて、頭に着けた大きな赤いリボンがかなり目立つ。身長的にも
顔は…正直言ってかなり綺麗だ。睫毛が長い。
髪も肩まであるし女だろうか、と思った。
しかしそれだとさらにまずい。倒れている女にこの町で見慣れない男がついている…そして踏んだという事実…もちろんそういうことになりかねない。
こんなときってどうするのが人間的に正解なんだろうか。
よし
逃げよう
林檎は人間として最低の結論を導き出した。しかし保身の為ならなんだってする。クズ上等。
回れ右をして家の方向とは反対を向いた。
すると、
「待て」
と背後から男みたいな声がした。信じたくない林檎は恐る恐る後ろを振り返る。
さっきまで俯せだった物体…人が蠢いて、立ち上がった。
「お前人踏んどいて無視はねーだろ。最近の高校生は教育もなってないのか」
起きちゃったよ…
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