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どがしゃっ、ばきいっ
何かが盛大に折れる音がした。驚いた林檎はあわてて音の方向を向く。
…非日常のオンパレードに卒倒してしまいそうだった。
木から男が落ちてきたのだ。枝が折れ、葉も何枚か無惨な姿になっている。
男はうつ伏せで倒れていて、死んだようにぴくりとも動かない。
流石に何かの撮影か何かかと思い、林檎は赤リボンに視線で助けを求めた。
…そうだ。そうに決まってる。これはあいつらの映画か何かで、俺はきっとそれのエキストラなんだ。
リアルな撮影を求めるんだろ?さ、さっすが~最近の映画は違う…
「…?」
リボンはん?と笑顔を向けてくる。この状況に違和感を感じているというより、楽しんでいる様子だ。
なんだこいつ、腹立つ。
「知らねぇのかよ…」
「いやまぁ、知り合いではあるよ。幼なじみ」
「幼なじみ?あんたの知り合いはこんなやべーやつしかいないのか?」
「んとね」
先程以上に大騒ぎする林檎にリボンが説明しようとすると
がさがさと音がして、それを遮った。
「…っ…待てって。俺から説明させてもらう。…いや、説明せんでもお前なら大丈夫か?」
落ちてきた男が関西弁で口を挟んできたのだ。
林檎はあんぐりと口を馬鹿のように開ける。
さっきまでは確実に死んでたと思ったのにむくりと起き上がっている。
どうなってんだ。
赤リボンが「さっきから話中断されてばっかり」とぼやく。
今はリボンよりも落ちてきた奴の方の話が気になるので、林檎はそれをやんわりと無視する。
よっこらせと立ち上がった男は結構若くて、ひょろっとした高身長だった。
八重歯の、なかなか女受けしそうなやんちゃな顔立ちだ。
しかしそれよりも目についたのが、そいつの右腕だった。
「…アンタ、それ折れてないか?」
肩が外れている、というのか。いや、肘も曲がっている。
とにかく右半身からモロに落ちたらしき男の右の肩から下は、見るも無惨な状態になってしまっていた。
折れているどころの騒ぎではない。吐き気がして、林檎は反射的に口をおさえた。
男は「あーほんまや」と、やっと気づいた、という様に自分の腕をじろじろと確認する。
相変わらず口を開けたままの林檎の横でリボンは「始まるぞ」と呆れたような顔で笑った。
「始まる、って?」
「まぁ見てろって」
「なんやねん人を見世物みたいに」
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