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まぁやるけど。と気だるそうに言って、男は左手で怪我をした右腕にふれる。
すると左手から発光する物質を出しているかのように、そこから光が漏れだした。
「それ」は淡い緑色をしている。
数秒して光が消え男が左手を離した時には、もう右腕は綺麗に戻っていた。
「ん。こんなもんか。…なんや、そんなに興味あるか?」
数回腕を振りまわし、獲物を見つけた猫のような目で此方を見てくる。
その目は緑色に光っていた。
にやりと笑うと彼の白い八重歯が覗く。
林檎の頭の中はもう滅茶苦茶だった。
治癒?そんなの人は自主的にできっこない、いや仮にできたとしても人体は発光なんてしない!それに何だあの目!カラコンか?
しかし感情とは裏腹に、何もリアクションが起こせず立ち尽くすだけだったが。
リボンは「この子困ってんじゃねーか」と謎の男を前に鼻で笑い、立ち上がって近づく。
黒髪と真っ赤なリボンがふわりと揺れて、ちょっといい匂いがした。
不覚にもキュンとしてしまった自分に腹が立つ。
どきどきしている間にも二人は顔をぐっと近づて口論を始める。
「あんましそういうの知らない人の前で見せるんじゃねーよ治癒野郎。いくらY数値が高いからって、調子乗るなよ」
Y数値って何だろう、と林檎は考えたが、二人の雰囲気が険悪なのを察して、慌てて口をふさいだ。
「そっちこそ!周りに弱いところ見せたくないのは分かるけど、最近逃げてばっかりやんけ!大変やな」
彼は目を見開き、大きな声で煽るように言った。
「堕ちた減赤は!」
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