エピソードゼロ。

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真耶ちゃんはかわいいね。 子供の頃そう言って僕に近づいてくる大人が怖かった。 性の話題が出るだけで、身体が硬直する。 嫌悪感で吐きそうにもなった。 そう、女だからいけないんだ。 男の子になればきっとこんな気持ちからは解放される。 僕はいつからか自分の事を『僕』と、呼び。 身に付ける服装も男物を選んで着るようになっていた。 母さんはそういうことはあまり煩くいう人じゃなかった。 ごめんね。母さんが悪いね。 そういう母さんの目は、僕では無く自分を責めて。 あれはきっと、子供の頃一時期一緒に暮らしてたあの男に対しての、母さんなりの負い目だったんだろう。 記憶はない。 その男に何かされたという記憶は僕には幸い残ってはいないんだけれど、何かあったのでは、という様子は母さんにも見えたのだろう。 母さんとその男が大声で喧嘩をし、そしてその男が出て行ったのは覚えてる。 なんだかすごくほっとしたのも。 原因は、たぶん、そこ。 それ以来の男性嫌悪、自身の女性性の嫌悪。性に対する嫌悪。 だから僕は、名前も真那ではなく真と名乗るようになった。 中学も高校も男性の制服で通い、そして……。
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