エピソードゼロ。

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あのおじさんに悪気があったかどうかはわからない。 でも、あの独身のおじさんの家に住まわせて貰うのは流石に躊躇われた。 だからこうして一人都会に出てきたわけだけれど。 何日も都会の砂漠を彷徨って。 いい加減に生きているのに疲れ果てた僕は、ネットのある噂を頼りにとある公園にやってきた。 その噂、夜中の2時9分9秒に池屋公園で月を見てると、化け猫が現れる、って、話。 その化け猫は人の狂気や絶望、欲や哀しみ、そして……。その人格までも食べてしまう。 食べられた人間は……。まあ普通はそのまま廃人になって終わり。 でも。 人生を終わらせたい人間にとっては、御誂え向きかな。 上手くすれば。 可能性は低いながら、まっさらな心で人生をやり直せるかもしれないのだから。 その夜は。 満月だった。 綺麗な月を眺めながら公園で1人待つ。 ネットの噂なんて眉唾だしそんな人生がやり直せるのであれば此処にはもう人が溢れてしょうがないくらい集まってもおかしくはない。 僕だって、信じたわけじゃない。 ただ、可能性っていうものがあるのなら、かけてみたくなっただけ、だ。
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