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「色々とお世話になりました」
朝起きて、というかもうすでに夕方になっていたけれどなんとかおきたとき。
そこは見知らぬ部屋、見知らぬ空間だった。
外は喧騒に包まれて、ここが繁華街のど真ん中だと主張している。
スナック灯のあるビルの二階。
みやこさんの部屋だった。
ベッドに寝かされちゃんとふかふかのお布団までかけてもらって。
もう、ほんとなんてお礼を言っていいのか分からなくて。
朝ごはんまで用意されていたので(と言ってもお昼ご飯ももう時間的には過ぎている)そんなご飯ではあったけれど、みやこさんと一緒に美味しくいただいて。
で、さすがにこれ以上はと思った僕は、みやこさんにお礼の挨拶をして帰ろうかと思ったのだった。
まあ服はこのまま借りていくしかないんだけど。
「ねえあなた、ちゃんと行く宛あるの?」
「まあとりあえず漫喫にでも行きますから」
「って、あなたみたいな女の子が漫画喫茶で寝泊まりしてたっていうの? もう、冗談じゃない。そんなの何かあったらどうするの!」
「でも……」
「でも、じゃないの!」
ちょっと怒ってるみやこさん。なんだか嬉しいけど。
「ねえあなた、もしよかったらここで働かない? なんだったらお部屋決まるまで住み込みでもいいわよ?」
「あ、いえ、でも、僕はホステスはちょっと……」
「って、水商売が嫌だっていうの?」
「いえ、そういうわけ、じゃ、なくて」
「あは。冗談よ。あなたがそんな偏見持って無いことくらい見てればわかるから。っていうかあなた、もしかして女性として見られるのが嫌?」
う、って、別にそういうわけでも……。
「ううん、ちがうわね。きっと性的な目で見られるのが嫌なんだ。そうじゃない?」
「はい……」
「だったら別にホステスじゃなくていいから。カウンターに入ってバーテンしててもいいわよ。男装の麗人っていうのもけっこう人気あるのよ」
「ありがとうございます!」
「そうね。こんど連れてってあげようか、参考に。男装の麗人がいるお店」
「おねがいします!」
なんだかこの人いい人っぽいし。
いいよね。僕、生きてても……。
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