普通の猫は化け猫になったりしない。

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普通の猫は化け猫になったりしない。

 夕方耕助さんに報告をした後、僕はまたお屋敷に戻って来ていた。  今度はちょっとラフな格好で。  庭に簡易テントを張ってその中で待機する。ミケコが現れるのを待つつもり。  もう夏も終わる。夜は寒いかも?  ジーンズにTシャツ、一応長袖のパーカーも持ってきた。  依頼の打ち合わせの時にそう約束をしてたので、戻って来た僕を庭まで案内してくれたみどりさん。 「ミケコちゃんをみたのはどのあたりだったんですか?」  と、聞いてみる。 「あそこの池の向こう側でした。生前と寸分変わらぬ姿でこっちを見ていたので、ミケコ、と呼んでみたのですが……」  ああ、やっぱりこの人はミケコは死んだと思ってるんだな。そう思い。 「そのままふうっと居なくなっていました」 「気のせい、とは思われなかったんですか?」 「化けて出たのかとは思いましたよ」 「化けて、ね。何か思い当たる節でも?」 「もしかしたら探して欲しいのかも知れません。あのこは奥様の側に居たかったでしょうから」  ああ。  居なくなった原因が何かある。みどりさんはそんな風に考えているのかもしれないな。  これ以上は口を噤んでしまったみどりさん。夕飯の支度がと奥へ戻って行ってしまった。  しょうがない。ミケコが現れるのを待つしかないかな。  日が暮れるのが少し早くなったかな。そう思いながら空を見る。  とにかくミケコの姿をこの目で見ないことには判断が出来ない。そう思いここで見張ることにしたのだ。  僕がいたら出てこない、とかいう話だと最悪。  その場合は別のアプローチでいくしかないんだけど。  割と猫には好かれるタチだとは思ってる。  野良猫も僕には姿を見せてくれることもおおい。  ミケコやーい。出てきておくれ。  そう願ってじっと庭を見続けた。  でも。  いったいミケコに何があったんだろう?  化けて出たいようなそんな事件があったのだろうか?  まだ生きているのかもしれないって、そんな可能性も無いではないけど、みどりさんのあのセリフはほんと気になる。  普通の猫は死んだからって化け猫になったりはしないのだから。
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