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「お前のせいで唯がっ」
二時間サスペンスなら、確実に相手を殺しているくらいの勢いで、翔太はフライドチキンのおじさんの胸ぐらをつかもうとする。
しかし、おじさんが着ているのは本物の服ではないので、胸ぐらはつかめない。
翔太の手は滑り、勢い余って、おじさんに激突。
身長173センチ台座3センチのおじさんに、183センチくらいの翔太は鼻に頭突きを喰らわされた感じになっていた。
がすっ。
ぐふっ、という音と声が連続したあと。
翔太に頭突きをした振動で震えるおじさんの下に翔太はしゃがみ、鼻を押さえていた。
俯いたまま、
「……今、フライドチキンに殺されたかと思った」
と呟く翔太を見下ろし、本田は、
いや、あんたを殺そうとしたのはフライドチキンじゃなくて、おじさん……、と思いながら、
「大丈夫ですか?」
と翔太に声をかけてみた。
うわ~、面倒そうな人だなあ。
関わりたくないなあと思っていたのだが、完全な独り相撲で痛がる翔太がちょっと哀れになってきたからだ。
「送りましょうか?」
と本田は訊いてみた。
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