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フライドチキンのおじさんの悲劇
蘇芳の屋敷の運転手、本田は、時折、蘇芳や宮本から買収という名のお小遣いをもらっては競馬につぎ込んでいた。
だが、このところ、負けが込んでいたので、本田はついに競馬をやめ、宝くじに鞍替えしていた。
やった。
しょぼい金額だが当たったぞ、と思いながら、その当たりくじを見ながら夜の繁華街を歩く。
よしよし。
馴染みの店で一杯やって、と思ったとき、気がついた。
少し先にある、もう明かりの消えているフライドチキンの店の前で。
そこに微笑んで立つ白いスーツのおじさんに絡んでいる男がいることに。
酔っ払いかな?
と思ったが、安酒を呑んで絡んで歩くような男が着ているスーツではないようだ、と気がついた。
蘇芳たちをいつも間近に見ているので、目だけは肥えていた。
近づいていった本田は、あー、あれは……、と苦笑いする。
フライドチキンのおじさんに喧嘩を売っているのは、桝谷翔太だったのだ。
あの辺の人たちは、みな人ではないものと話したくなるのだろうか。
金持ち、わからない……と思いながら、本田はちょっと離れたところから、翔太を観察してみた。
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