Answerとは何か

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 でも、私だけは……それを認めたくなかった。  恋だなんて言わない。  愛だなんて言わない。  正義だなんて言わない。  でも、悪だとも言わない。  私の行動が、たくさんの人を傷つけた。  子供たちからお母さんを奪った。  私は大罪を犯した。  だから甘んじて罰を受け入れて――孤独を私は選ぶ。    ごめんね。  可哀想なことをしてしまって、本当にごめんなさい。  それでも私、だから……生きています。  謝りたい人はたくさんいる。  謝らなければならない人もたくさんいる。  でも、もし聞いてもらえるのであれば――私が傷だらけで重傷だったことを知ってもらいたい。  あの時、私はもう死んでしまいそうだったことを、聞いてほしい。  助かる方法を、一つしか見つけられなかったことを、謝りたい。      あの日から、もう6年が過ぎた。  まだスキャンダルの火の粉は残っていて、私の昇格は望めなくなった。  お陰で細々と小さく仕事をしている。  今更辞めて行く先もないから、切られるまで残ると意地をみせた。  それでも人付き合いは怖くて、会社の人とは表面上の距離でしか仲良くなれない。  元々の性格上、笑いながら付き合っていても、疑心暗鬼が顔を出す。  モテるわけでもないくせに、不倫はするなんてと、後ろ指をさされている気がする。  一生背負い続ける十字架を、重いと思いつつも、当然と思って受け止めている。  その程度の肝は、私も据わった。  「優花」  「ん……?」     久しぶりの逢瀬。  相変わらずめちゃくちゃに抱いてくれる彼に翻弄されて、意識のふらつく私を功太が呼ぶ。  呼ばれて、私がどんな顔をしているのかなんて知らない。  けれど、彼が微笑むから悪い気はしない。  「定年が来たら、籍を入れないか?」
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