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どれほど登っただろう。距離的にはそんなにない山道も傾斜がある。一度は棒から回復した両脚がまた重くなってきた。取り外してしまいたいくらいだ。そんなことおかまいなしに鳥がさえずる。姿は探せない。
走らなくていい鳥がうらやましい。僕はまたなぜ今こんなにつらい思いをして勾配に苦しむ道を走っているのかの自問自答がやめられない。
風にのって空を飛ぶとはどんなものか尋ねてみたい。羽で空を歩き、大地は足で歩くのかって。そうすると鳥もやっぱり二足歩行なのかなぁ。なんだ、鳥にも止まり木は欠かせないじゃないか。
もう何に悩んでいるかすら危うくなってきた。つらい、やめたい、それしか出でこなくなる。悪夢だ。
峠にさしかかった。ようやく視界が開けてきたのだ。
出発地点の運動競技場、シンボルの丸い屋根のドームがどんどん大きく近づいてくる。またこの場所に戻ってきた!
立ちはだかる現実によろけながら力がわいてくる。下りを利用して一気に加速する。
苦しみから解放される瞬間が近づくのって、なんて快感なんだろう。脳みそが活性化してる気がする。待ち望んだ時を迎える直前が一番燃える。
それに反して終わりが近づくのって、なんて不思議なんだろう。嬉しいような、寂しいような。いろんな気持ちがないまぜで。
生まれた街を離れる時、新幹線の窓から知らない景色を見た。あの旅と似ている。どこか名残惜しい。
終わってほしくない。ひたすら願ったのに。僕はやっぱり走っているられるならずっとずっと走っていたい。いやでもやっぱり苦しい。ああ、やっとやっと終わる!
競技場内へ入ると、ラストスパートかける人につられて僕も最後の力をふりしぼった。周りなんか見えない。ゴールーー!
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