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古典の授業で出てきた春曇りというやつか。空は灰色がかった雲に覆われどんよりとした天気。今日はそんな日だった。
すすけた水蒸気の密集した隙間から太陽が見えたその時だけぱあっと明るくなり、でもすぐにまた風に吹き流されてその穴は埋められてしまう。
やっぱり暗いのだ。風もわりと冷たい。体を動かしていないと肌寒く感じるくらいに。
僕らはそんな空の下で運動競技場までの送迎バスに乗り込む。僕の2、3人前あたりで乗降口横に立つジャージ姿の引率の先生が「暑いよりはこういう日の方が走りやすい」と言った。
入学式から一ヵ月後、GW明けの5月。とうとう待ちに待った、待ち遠しくなんてなかったマラソン大会の日が来てしまった。
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