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「どう? ここの学校、行ってみない? 紘太に合うと思うんだ」
居間の食卓机に学校案内のパンフレットを広げた母さんにそう言われて、僕はこの高校へ進学することを適当に決めた。中3になったばかりの春。ちょうど一年前の今頃。
母方の実家のある街へ父さんが仕事で赴任することになったがきっかけだった。最初は父さん一人で行くことも考えたらしいけど、母さんと話して親子3人で引っ越すのが一番いいとなったらしい。自分の実家に今より近くなるから母さんもそれでよかったんだって。
ボッチの僕には同じ高校へ行こうぜと約束する友達もいなかったし、行きたいところもなかった。自分の進路だけど正直どうでもよかった。
父さんは先に一人暮らし。その後に母さんと2人で合流することになった。
高校には無事合格。僕は中学卒業と同時に生まれ育った場所を離れた。新居の社宅アパートの最寄り駅までは父さんが車で迎えに来てくれて、会うやいなや「メールはしたけど一応な、卒業と進学おめでとう」そう言って笑った。
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