走れ走れ。

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 1年生は入学後、マラソン大会の日までメインの授業は体育になる。そこへ向けて練習時間が大幅にとられていて、大会が終わると他教科の授業が本格的に始まる。  それまで体育以外の科目を全くやらないわけではないが、イスに座って机の上で教科書を開いているより感覚としては毎日学校へ走り込みにきているようなものだった。やるしかないから取り組んだけど。  最初は基本的なことから学ぶ。準備体操から、走り方から。背筋は伸ばしてとか、カカトからつくイメージをしながらとか。  早歩きから始まり、その後に少しづつ走る距離を増やして慣らすといった具合だった。  おもに体育館とグラウンドを使い、まれに校外で走ることもあった。  それは母さんが子供の頃からの恒例の風景のようで、だから町の人はよくわかっており、時に農道にまで駆りだして練習する一年生集団を見るとみんな「春が来た」と思うらしい。  練習はクラスごとではなく、同じレベルくらいの生徒が一緒になる。このあたりはおおらかだなぁと思う。  このおかげでほどよく「クラス分け」というものが曖昧になり、1学年全体でクラスメートの顔と名前が覚えられない状況は、僕にしたらありがたかった。  中にはもともと陸上をやっていて走れる生徒や20キロ走破を目指すような代表生徒もいる。そういう人たちは別グループで調整する。通常は男子10キロ、女子は5キロを走る。
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