第7話

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第7話

高句麗の話は、実に単純明快だった。 「ストレス性の鬱だな。」 「まあ、こんな家にいたらグレるか病むかするわな。普通。」 「で、坊っちゃんは、グレなかった代わりに病んだと。」 「そういうこった。」 高句麗は、メガネを薄汚れたハンカチで拭きながら飄々とそう言ってのける。 そこで、噛みつかんばかりに怒号を上げたのが百済だ。 「な!新羅!お前ずっと坊の傍にいて気付かなかったのか?!」 新羅の喉元を締め上げる百済に、落ち着けよ。と、言ったのは高句麗だ。 「コイツが何年支えてきたか知らんが、気付くとか気付かないとかじゃない。まして、坊っちゃんは、隠しとおそうとしてたんだろ?」 「手首の傷。今回が初めてって訳じゃないようだし。」 新羅は黙って、青を見つめている。 百済は、新羅を解放すると、どすんと胡座をかいて新羅の横に腰をおろした。 「どうすればいいんだ?」 実に分かりやすい男である。 「兎に角、目を離すな。少しでも様子がおかしいとおもったら、連絡をくれ。」 そして、 専門外なんだよなぁと続いたのだ。 「私が責任持ちます。」 新羅が低い声で言う。 「責任て、お前……。」 百済が答えるが、新羅の意思は硬い。 こうなったら手強でも動かない男である。 「もう一度、一から坊の世話をさせてください。」 静かに頭をさげる。 「わかった。わかったよ。頭上げろよ。」 百済は罰が悪そうに頭をかいた。 「ありがとうございます。」 そうして、一波乱あった夜は更けていったのである。
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