☆止まらない衝動

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しばらくして、自宅の高層マンション前で車が止まる。明日の予定を確認されては吉澤から解放されたのは21時を過ぎていた。 今からだったら渉太のバイト先には確実に間に合わない。下手にタクシーも使えない今、自分の車は事務所に置きっぱなしだから自宅にも行けなかった。 どうしても今日中に話しておきたい……。 一先ずマンションのエントランスを抜けてエレベーターで自室まで上がる。部屋に帰ると律仁は透かさず大樹に連絡をとった。 何かしていないと落ち着かない。 今のこの状況で、渉太と繋がっていると言ったら大樹くらいしか思い浮かばなかった。 仲島のことでお互いに連絡を取らずの音信不通ぎみになっていただけに律仁は電話をする事に躊躇していたが今はそんな場合じゃない。 電話をかけ、2コール程で出た大樹は多少のぎこちなさを感じたが怒りは感じない声音だった。 律仁は少し安堵した後で初っ端から「大樹、渉太の連絡先知ってる?」と切り出す。 一秒でも早く返事が聞きたい律仁に対して 大樹が空けた数秒の間が焦れったく感じたが、結果は「知らない」と言われて、律仁は落胆した。 渉太は人付き合いが苦手で漸く最近になって 克服しつつあると言っていた。 大樹とならと思ったけど、今だに大樹ですら連絡先を知らないとは思わなかった。 あの時、吉澤を強行突破してでも自分の車で渉太元に向かえば良かったと悔やまれる。 それだけのやり取りをして大樹とは「じゃあ……」と終わるわけにもいかず、「急にどうしたんだよ?」と問いかけの意図が酷く気になっているようだった。 今回の週刊誌の出来事については大樹も知っている。それをきっかけに大樹と距離ができたきっかけになったようなもんだし、ただ雑誌に載ることまでは想定外だった。 決して無関係者じゃない大樹にも事情を説明してやらなければいけない。 電話で話すにしても長くなりそうで律仁は大樹に「会って話しがしたい」と告げる。 すると、 大樹は遅い時間にも関わらず、「いいよ」とあっさり承諾してくれた。 決して夜遅くでも呼べない距離じゃない。 自宅マンションから自転車で10分圏内の中層マンションに住んでいる親友に感謝をする。 外で堂々とできる話でもなくて、部屋まで来てもらい、電話を切ってからきっちり10分後に大樹が到着した。
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