☆止まらない衝動

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「大樹、お前にお願いしていいか?」 律仁は両手指を絡ませて強く握っては真っ直ぐ大樹を見る。そんな大樹は「なんだ?」と返しては律仁の緊張感を感じとったのか、大樹も大きく唾を飲み込んでは身構えているようだった。 「渉太がこのこと知ったらショックを受けると思うんだ。だから、お前から渉太に説明してやってくれないか?本当は俺の口からちゃんと全てを話さなきゃいけないけど、まだ撮影残ってるし、終わるまで暫く渉太に会いにいくのは難しい……」 今日中に会うことが出来ないなら、大樹に頼んでも渉太に説明するしかない。 苦渋の選択だが、仕事もラストスパートでドラマが完全に終わるまで投げ出すことも出来ない今、律仁にはコレしか方法が浮かばなかった。 「別に俺は構わないけど……俺からお前が律だって話すことになるぞ?」 「ああ、構わないよ。後でちゃんと時間できたら渉太に改めて俺から話すから……」 こういう時こそ前向きにならなければいけないのに自然と顔が俯いてしまう。 正直、怖いのは例え話を持ちかけたときの渉太が「芸能人と自分じゃ住む世界が違う」と完全に突き放していたことだった。 渉太が「律仁さんと前に進みたい」と言ってくれたことも無かったことにされそうで…… 渉太自身は俺の事をどう思っているんだろうか……。 渉太の性格上、自分の気持ちを何処か自分の中に隠してしまう癖があるのを大樹の一件で読み取れた。 表情にもなかなか素直に現れなくて、大体小突いてやれば、顔を真っ赤にしたり怒ったりして表に出てくるんだけど、「好き」か「嫌い」の感情までは超能力でもない限り分からない。 「お前がそう望むなら、いいよ。俺もお前に迷惑かけたし、渉太のことも心配だからさ」 大樹は一息つくと律仁の願いを承諾した。 「その代わり律仁、大学に顔出すのはもうやめろよ?こんなの出回ったんじゃ周りが余計に気づく」 律仁は一安心かと思えば大樹に忠告を受けて 気持ちが動揺する。大樹の意見はごもっともだが、頷くのを躊躇っていた。 大学で渉太と過ごすお昼が好きだから。律仁でいられる渉太と会える唯一の場所でもあったから……。 出入り禁止と言われると余計に行きたくなってしまう。 「お前まさか、この状況でもまだ来ようとしてたのか?」 何も返事をせずに黙り込んでると、直ぐに大樹に諭されてしまった。
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