*不安は度重なります。

8/18
1296人が本棚に入れています
本棚に追加
/363ページ
「目が覚めちゃったら眠れなくて。煌月まだ起きてたんだ」 『あぁ。ついさっきまで仕事してたからな』 「え、まだ会社?」 『いや、持ち帰ってきて部屋で仕事』 「あ、そうなんだ……」  副編集長ってこんな時間まで家で仕事するんだ。毎日大変だな。って受話器を耳に当てながら呑気にそんな事を考えてしまう。  するとそのが気になったのか、煌月の方から声が掛かる。 『なんだよ、どうした?』 「ん?」 『こんな時間にLINEをよこすなんて、お前にしては珍しいだろ。なんかあったのか?』  またあいかわらず鋭いな。確かに普段こんな時間にLINEなんて送らないし電話なんてもっとしないから。まぁ恋人じゃあるまいし『寂しくなって声が聴きたくなったの』なんてキャラじゃないけど。 「本当にただの暇つぶしだけだったから、気にしないで。明日も仕事なのに悪かったね。じゃ、おやすみ」  変に心配を掛ける訳にもいかず、すぐに切り上げようと話を終わらせたはずだったのに。 『待て』  煌月から通話を終了するのを止められてしまった。 『何かあったんじゃねぇのか?』  そりゃ中途半端に終わらせようとすれば、そういう反応もするよな。そう思いながら『本当になんでもないよ』って言っているのに信じる様子もなく、それどころかコイツの直感は恐ろしい。 『調子でも……悪いのか?』  すぐ見抜く。 「そんな訳ない……ッ」  否定しようと言い終わる前に、またさっきのような胸の締め付けに襲われ、誤魔化しようもない苦しさ交じりの声が漏れた。  あぁー……こんなときに最悪。
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!