ゴーストとティータイム

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 室内灯の明かりに照らされた寝台の上、ハーヴィーは全裸でロイクの膝に抱えあげられていた。僅かに視線を落とせばロイクの胸元の大きな傷跡が否が応にも目に入る。だが、現在のハーヴィーにそんなことを気にしている余裕は皆無だった。  後孔に食まされた指がゆるりと動く。長い指が媚肉を開く感覚に、ハーヴィーは僅かに眉根を寄せた。 「ぁっ、ロイ…ロ、ィ」 「上手に飲み込めて、君は良い子だねハーヴィー」  指だけでは物足りなくて、けれども素直に言える筈もなくて、ハーヴィーは目の前の金色の頭を抱き寄せた。ロイクの指が動くたびに、痺れるような淡い快感がさざ波のように全身に広がっていく。  敏感なしこりをゆるく指でくじられる。無意識に腰が揺れるのを、ハーヴィーは止めることが出来なかった。  ――また…っ。  金色の髪を掴む指先がふるりと震える。いつまでも決定的な刺激を与えてくれないロイクに焦らされる。 「あっ、も…ロイ…っ」  思わず「もっと」と、そう言いそうになる。だが、ロイクの指はするりと後孔から抜け落ちた。ただ、一本だけを残して。  快楽の波に攫われて、なけなしの理性が音を立てて崩れていく。 「ァ、ぃや…だ…」 「嫌? 指がいや? それとも、もっと欲しいのかな?」 「もっ…とぉ…、も、焦らさな…で」 「Good boy」  ちゅっと頤に口づけられると同時に再び指を増やされて、ハーヴィーは快感の走る背を仰け反らせた。望んでいた場所を強くくじられる。 「アッ、ア、…ぃ、良い…っ」 「ココが好き?」 「好きっ、……気持ち良い…!」  ようやく与えられた刺激は強烈で、気づけばロイクに縋りついていた。 「可愛い僕のハーヴィー。素直な子には、ご褒美をあげなきゃね」  ぐちゅりと音をたててめいっぱいに拡げられた入口の襞に、僅かな苦しさを覚える。 「ゃ…だ、拡げな…でぇ」 「拡げないと、もっと君を気持ち良くしてあげられないだろう?」  長い指が敏感なしこりをゆるく撫でていく。 「ココを、たくさん擦って欲しくない?」 「……欲しい…」  蠱惑的な声に唆されて、願望を口にするハーヴィーへとロイクは口づけた。 「良い子だ。支えていてあげるから、自分であてがってごらん?」  指を引き抜かれても綻んだままの蕾がひくりと震える。指先に触れたロイクの雄芯の太さと熱さに、微かな恐怖がハーヴィーの脳裏を過った。 「こんなの…入らなぃ…」 「大丈夫。君ならきっとできるよ」  無理だと頭を振るハーヴィーを宥めるように、ロイクの大きな手が腰を撫でる。 「良い子だから腰を上げて? ちゃんと、僕がこうして支えていてあげるから」  引き締まった腰に掛かった手が、ハーヴィーの躰を難なく浮かせた。 「入口にあてて、ゆっくりと腰を落としてごらん」  ロイクに言われるがまま、ハーヴィーは熱い熱を後孔の蕾へとあてがった。恐怖とは裏腹に、待ち望んでいたかのように雄芯に吸いつくような襞の動きに恥ずかしさが込み上げる。 「も、…ぃゃ…だ」  そう口にした瞬間、熱い先端がハーヴィーの蕾を割り開く。  痛みは感じなかった。ただただ、拡げられた襞のきつさと圧迫感に圧倒される。 「ひッ、や、嫌…っ」 「っ少し、きついかな…」  困ったように小さく笑うロイクの腕が僅かに下がり、ぐぷりと肉傘を飲み込まされてハーヴィーは背を撓らせた。 「ああっ、アッ、ゃ…苦し…!」 「もうちょっと…我慢して?」  ずず…と、敏感な肉壁を熱が侵していく。途方もない質量に侵食される感覚は、だが恐怖だけでない感覚をハーヴィーにもたらした。  この熱で敏感なしこりを擦りあげられたらとそう思うだけで、一度知ってしまった欲が頭をもたげはじめる。  ――あと…少し…っ。  ほんの少し腰を落とせば得られそうな快感に、無意識にハーヴィーの腰が揺れる。敏感なしこりを自ら熱の塊へと擦り付けた瞬間、痺れるような快感が全身を満たした。 「ん…っく、ァッ、あ、良い…っ」  媚肉を熱に抉られる快感は止めようもなかった。 「は、ぅんっ、…ぁ、指と…全然…違っ」 「指の方がよかった?」  それなら抜いてあげようかと、腰を浮かされてハーヴィーはロイクの背をぎゅっと抱き締めた。 「ゃっ、こっちが…いっ」 「素直な君はとても可愛いね」  再び埋め込まれる雄芯が媚肉を割り開く。全身を満たされるような感覚にハーヴィーは艶やかな吐息を零した。 「ぁっ、深…ぃ、ロイッ」 「上手に締め付けて…、偉いねハーヴィー」 「も…っと、奥まで…」  望めば望むだけ、快楽を与えてくれるロイクに夢中になる。ハーヴィーは熱に浮かされるようにロイクを呼んだ。耳元に囁かれる褒めるような言葉が、途方もなく心地よかった。  快楽に流されるままロイクの雄芯を根元まで銜え込んだハーヴィーは、微かに息を詰めた。あと少しでもロイクが腰を突き入れたなら、内臓まで届いてしまう。  気を抜けば自ら崩れ落ちそうになる膝に、ハーヴィーはロイクの背にしがみつく以外なかった。 「だ、め…、ロイッ。…それいじょ…は…ぁっ」  支えていると言ったくせに、いつの間にか腰を離れた大きな手が震える太腿を撫で上げる。 「体勢がツラいのかな? けど、僕が上になると君は怖がるだろう?」 「良い…から、おろし、て」  なけなしの力で腰を浮かせれば大きな手にふわりと躰を抱えあげられる。ずるりと後退した肉傘に勢いよく媚肉を擦られて、ハーヴィーは欲を吐き出した。 「ンッ、アァアアッ――…。ひ…ぃやぁ…っ」 「そんなに締め付けながら嫌と言われても…ね」  くすくすと可笑しそうに笑いながら雄芯を引き抜かれたハーヴィーは、寝台の上に寝かされた。腰の下に挟まれた大きな枕に、僅かに腰が浮きあがる。 「素直な良い子は、どうやっておねだりするのかな?」  後孔の蕾を長い指先で撫でられて、ハーヴィーは自ら膝を立てた。 「ここに…欲しぃ…」 「良く出来ました。ご褒美にたくさん君を良くしてあげる」  優しく髪を撫でながら、再び後孔を熱で満たされる。中の媚肉が嬉しそうにロイクの雄芯を締め付けた。 「あっ、ん、…っ良い、気持ちぃ…ロイ…!」 「上手に僕を締め付けてるのがわかるかい?」 「熱…くて、おっきぃ…のぉ」 「ふふっ。僕をこんな風にして、君はいけない子だね。お仕置きしちゃおうか?」  耳朶を食む唇が低く囁いて、ハーヴィーはふるふると首を振った。 「ぃ、ゃ、…お仕置き…は、嫌…」 「嫌なのに、君の中はもの欲しそうに僕を締め付けてるの?」  違うと、そう言おうとしたハーヴィーの唇からは、代わりに艶やかな嬌声が零れた。長い指が、胸の小さな突起を摘まみ上げていた。 「んぅ、…ふっ、あ」 「また締まった。君の躰はどこもかしこもいやらしいね」 「ァッ、ぁ、ごめ…なさ、お仕置き…しなぃ、で…」  すぐそばにある熱に縋りつく。 「ロイ…っ、やさしく…して…」 「優しくどうされたいのか、ちゃんと言ってごらん?」 「ぁ、なか…こすって欲し…」 「こう?」  入口ぎりぎりのところまで後退した熱が再び体内をゆっくりと満たすのに合わせて、ハーヴィーは長い吐息を吐いた。 「ぁ――…、ぃぃ、それ…きもちぃ…」 「どうせすぐにもの足りなくなるくせにそんなに可愛い声を出すなんて、やっぱり君には少しお仕置きが必要かな?」  ずるりと、後退した肉傘が入口の襞を捲りあげる。すぐにも抜け落ちそうな熱に、ハーヴィーはいやいやと頭を振った。 「ゃぁ、ァッ、抜かな…っでぇ」 「抜かないよ。けど、このままだ」  ほんの僅かでも動けば抜け落ちてしまいそうな雄芯に、無意識にハーヴィーの腰が揺れる。 「ンッ、ぅ…」 「誰が勝手に動いて良いと言ったのかな?」 「ぁ、…だっ、抜けちゃ…ぅ」 「欲しかったらなんて言うんだっけ?」 「おっきいの…ください…っ」 「そう。上手だ…ねッ」  ばちゅんと、卑猥な水音とともに熱い雄芯がハーヴィーを貫いた。呼気とともに震えるハーヴィーの屹立が欲を吐き出す。 「かは…っ、ぁ、ああ、あッ、っく、っぅ」  腹筋を汚す白濁を指先で掬い取ってロイクは小さく笑った。 「吐き出すほど気持ち良いくせに、まだ優しくされたいかい?」 「ァッ、もっとぉ…、もっと、欲し…っ」 「良い子だ。好きなだけ犯してあげる」  ロイクが動くたびに途方もない快感に襲われる。欲しがるように収縮する媚肉を強引に割り開かれるのが、堪らなく気持ち良い。 「良…いっ、ロイッ…きもちぃっ」  高波に攫われまいとするかのように、ハーヴィーの指先がロイクの背を掻き抱く。堪えるように目を閉じるハーヴィーを、ロイクが満足そうに見つめていた。 「僕も…、気持ち良いよハーヴィー」  耳朶を震わせるいつもより少しだけ掠れた声。欲情の熱をはらんだロイクの声さえも心地良い。 「んっ、アッ…ロイっ……ロイ…」  求めるように名を呼ぶハーヴィーへと口づけて、ロイクは上体を起こした。無防備に曝け出された引き締まった躰を見下ろす。  ――癖になりそうだ…。  嫌がるわりに褒めれば褒めるだけ可愛らしく甘える姿も、快楽に弱い躰も、全てがロイクの興味をそそる。何よりも、普段とのギャップが愛らしくて堪らない。  ――まぁ、こうなるのが嫌であんなに抵抗してたんだろうけど…。  くすりと笑みを零していれば、甘ったるい声がロイクをねだる。 「もっとぉ…、おく…まで」 「うん? どこに欲しいの?」 「ここ…の、中…」  ハーヴィーの指先が自らの下腹を辿る。そろりと動く指先が、中に埋まったロイクの雄芯を撫でた。 「……ロイの…あついの、欲し…」 「ッ、君には参るね…」  まるで項垂れるようにロイクはハーヴィーの首筋へと顔を寄せた。初めての夜くらいは優しく扱おうと、そう決めた心があっけなく吹き飛ばされそうになる。 「僕は加減が苦手だと、そう言ったろう…?」  堪えるように吐き出されたロイクの声に、若干の苦悩が混じる。 「痛いの…やぁ…っ、やさしくして…」 「困った子猫ちゃんだよまったく。性悪にも程がある」  仕置きだとばかりにハーヴィーの首筋を噛んで、ロイクは自嘲を零した。 「あっ、やっ…んンッ」 「嘘吐き」  言葉とは裏腹に、ハーヴィーの媚肉が食んだ熱棒を締め付けていた。 「どうやら君は、躰の方が正直なようだ」  くすりと小さな笑みを口許に浮かべ、ロイクがハーヴィーの片膝を抱え上げる。硬い肉棒に体内を抉られたハーヴィーの口からは悲鳴にも似た嬌声が迸った。  ロイクの動きに合わせるようにとめどなく零れ落ちる嬌声を唇が塞ぐ。 「ンぅ、んっ、ゃ…んっ」  息苦しさからなのか、はたまたただ気持ちが良いからなのか、ハーヴィーの媚肉が雄芯を締め付ける。まるで搾り取るようなその動きに、ロイクは息を詰めた。 「ッ、……出す、よ…?」  ハーヴィーの返事を聞いている余裕はなかった。ドクリと、溜め込んでいた熱を解放できる悦びに酔い痴れる。 「ぁっ、や、…ぁっ…ぃ」 「君の中の方が、よほど熱いよ…」  欲しがるように収縮する蜜壺の中へと欲望を思う存分叩き付けて、ロイクは充足感に吐息を零した。腕の中で震えるハーヴィーに口づける。 「可愛い僕のハーヴィー…」  くたりと脱力したまま動く気配のないハーヴィーから雄芯を引き抜けば、ぽっかりと空いた蕾から白い欲が滴り落ちた。    ◇   ◇   ◇  翌日。ハーヴィーはいつものようにロイクの腕の中で目を覚ました。  肩に乗った腕が煩わしい。だが、退かそうとした瞬間ハーヴィーは自身の躰に残る違和感に気づいた。  ――っ…。  どろりと後孔からあふれ出したものが何であるのかなど、確かめる気にもならない。 「ロイ……貴様…」  不機嫌を纏わせて振り返れば、気だるげにロイクが目蓋をあげる。 「おはよう、僕のハーヴィー…」 「何が”僕の”だ! 貴様は相手を労わるということも知らんのか!?」  口づけようとするロイクを押し退けて、ハーヴィーはまくし立てた。だが、当の本人はと言えば、その口から洩れるのはなんとも不服そうな声である。 「だって仕方がないだろう? 掻きだそうと思って指を入れてみたけれど、君の中が欲しがって僕を誘惑するんだから。それとも君は、気を失ってる相手を僕に犯せとでも言うつもりかい?」  しれっと放たれる言い訳に、怒りを通り越して言葉も出ない。ハーヴィーは無言でロイクに背中を向けた。  訝しんだロイクの腕が強引にハーヴィーを振り向かせる。ハーヴィーの首がぐきりと嫌な音をたてた。 「痛いッ!」 「あ…っ」  ロイクの手がピタリと動きを止める。 「大丈夫、まだ折れてない…」 「っ!?」  そろりと首をロイクに戻されて、ハーヴィーはようやく息を吐き出した。次の瞬間、今度はハーヴィーがロイクの胸倉を掴んだ。 「私を殺す気か!?」 「いや、今のは本当に悪かったと……それよりも目が覚めたのなら一緒にシャワーを…」 「はぐらかすな!」 「わかったわかった、降参だよハーヴィー」  大袈裟に両手をあげてみせるロイクに、ハーヴィーは溜息を吐いた。だがシャワーを浴びようというロイクの提案は、確かに魅力的である。 「だが貴様と浴びる気はない」 「そんな…っ」  ロイクの悲壮な声を無視して躰を起こしたハーヴィーはだが、寝台に手をついて凍り付いた。腰が、悲鳴をあげたのだ。 「痛ぅ…」 「大丈夫かい? だから言ったのに…」 「誰のせいでこうなったと…?」 「だから僕が責任をもって君をシャワールームに連れていくと言ってるじゃないか」  言うが早いかロイクの腕に抱きあげられても、ハーヴィーにはどうしようもなかった。  相も変わらず、長身の男一人を持ちあげてもけろりとしているロイクが憎たらしい。が、ハーヴィーにとっての受難はまさにこれからだという事に、ハーヴィーは気づいていなかったのだ。
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