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「この先がサーバー室だ」
エドガーが見取り図を見ながら言うと、ライアンは頷いた。持っていたアサルトライフの残弾数を確認している。
「足りそうか?」
「別に銃である必要はないんだ」
退役軍人のライアンらしい言葉だった。エドガーは肩を竦めて、
「経験者は言う事が違う」
「からかうなよ」
少しだけ、嫌そうなするライアンの肩を叩く。
「頼もしいってことだよ」
「ありがとう。行くか」
ライアンが短い茶髪を整えてヘルメットを被り直す。しかし、エドガーは自分の後ろから来た硬い音に気付いていた。
『そうはいかないな、ライアン・フリント』
振り返る。機械の大型犬がこちらにゆったりとした足取りで近づいて来た。AIに生物学的なデータを学習させた結果、完璧な犬の歩き方をする。爪が床を叩いて、カチカチと乾いた音がした。
「お前は……」
強化プラスチックの大型犬がそこにいた。全身は黒で塗装されている。強化プラスチックを使って、身軽で頑丈なボディを実現した。ペットロボットや、警備ロボットとして生産されていたモデルだった。
故に、敵に回るとこの上なく恐ろしい。
『名乗っていなかったな。私はSAPROと呼ばれるモデルだ。サプロと呼んでくれて構わない。もっとも、いつまで君たちが口を利けるかはわからないがね』
「ライアン」
エドガーはショットガンを構えた。
「ここは俺が引き受ける。お前は行くんだ」
『涙ぐましいな、エドガー・ジョンソン。ここで二手に別れることが、どれだけの悪手かわかっていると思うが』
「なるほど、よっぽど向こうにライアンを行かせたくないようだな、サプロ。ライアン、俺のことは構わず行け」
「エドガー……」
「迷ってる場合か! ここで食い止めなきゃ、アメリカ全土がこの有様だぞ!」
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