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「こんなところから早く出たいわ……」 はあとため息。 何故こんなことになってしまったのか。。。 ─── 「そろそろ姫を揃えなければいけませぬ」 「皇族には、男子が二人いる。これは荒れるな」 「私は長男である、光里様に嫁がせようかと」 「それはそれは」 「はて、光里様は病にかかっておられたような……」 「有望なのは、次男の陽玲様ではないか?」 「しかし、長男が天皇になるというのが習わしであるからして……」 「ふむ、確かにな」 光里様に嫁がせようと目をギラギラさせているのを、互いに隠すように扇をあおぐ。 もちろん、狙うは正室だろう。 ─── 「はあ!?なぜこのような文が届いているの!」 見なかったこと、届いていなかったことに出来ないかしら…… 「凄いではないですか!!陽玲様の側室に選ばれるなんて!」 目をキラキラさせて、羽衣にしては大きな声で言う。 「見たの!?」 「は、はい。チラリと見えました」 しどろもどろになりながら答える。 「まあ、いいわ。杜樹には内緒よ」 「何が内緒なんですか?」 「わっ、出た!」 後ろに立っていたのは、護衛である杜樹。 「出たとは心外ですね」 「あなた、足音がないのよ!驚くじゃない。寿命が縮んだわあ」 「大袈裟です」 冷静にそう答える杜樹。 あたふたしてる自分が馬鹿みたい。 「で、何が内緒なんだ?羽衣」 「なんで羽衣に聞くのよ! というか、前から思ってたけどね、私には何故敬語で羽衣はそうじゃないの」 ムウと膨れっ面になる私。 羽衣は答えてしまうに決まってるじゃない。 羽衣にとって杜樹はお兄さんのような大事な人なのだから。 まあ、私にとっても?そうなのだけど。 「そりゃ、お嬢だからですよ。羽衣は妹みたいなもんです」 そう言われて恥ずかしがる羽衣。 こんなこと言われるの、初めてなのだろう。確かお兄さんもお姉さんもいないといっていたし。 「ふーん、私は?」 「お嬢はお嬢です」 「なによ、それ」 まあ、仕方の無いことだとは思うけど…… 頭ではわかっているの、身分差の問題だってことはね。 それでもむすっとしてしまうの。 それって私が子供だから? 大人になったら、なんともなくなるのかな。 でも……それって寂しいよね。 私、大人に憧れてはいるけど、ずっと子供でいたいわ。 大人ってつまらなさそうだもの。 「どれどれ」 ぱっと持っていた文をとられた。 「なるほど……」 「か、返して!」 反射的に取り返そうとするが、私より背の高い杜樹には届かない。←物理的に 今だけ背が、背が欲しい。 ぴょんぴょんと跳ねている様子ははたから見れば滑稽だろう。 「お返しします、お嬢」 「ふん、どうせ全部見ちゃったんでしょ」 「ええ、全部見ました」 「やっぱり、こういう所はあなた、不遜だと思うわ」 「へえ、お嬢。不遜の意味をご存知で?」 険悪な雰囲気に羽衣がオロオロする。 不遜っていったけど、確か悪い意味だったはず……よね? 「やめて下さい~、ううう。喧嘩はダメですう」 羽衣が涙目になりながら訴える。 「と、とりあえず、羽衣落ち着いて。私と杜樹は仲良しだから!ね?」 「そうだ、お嬢が少し取り乱していただけだ」 取り乱していたですって~~ 羽衣の手前怒るわけにもいかない。 ぐっと堪える。 「っそうなのよ~」 「……そうなんですか? よかったですう」 ほっとする羽衣。 「それはそうと、お嬢!側室だなんておめでたいことです!」 「(どこがよ!!)」 きっと睨みつけてやる。 「まあ、上皇様の文は無下に出来ないしね」 はあ。 見ていないことにしたかったけど、そうもいかない。 それに私には……目的がある。 ちらりと杜樹を伺う。 気づくとお互いにこくんと頷く。 「とっっても気が進まないけど、入内するわ」 そう決意した先に、後悔することになる。
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