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商店街のアーケードの中に入ると、懐かしい風情に包まれて光司は嬉しかったが、いきなりシャッターの閉まった店が幾つか目に付いた。
今日は商店街一斉の定休日かもしれないなと思いながら、光司は実家のある方角に足を向けた。
結局、真っ直ぐ歩いてきた通りの店のシャッターは何処もかしこも閉まったままで、この商店街全土が定休日であることを示しているようだった。
光司はそのまま突き当たりを右に曲がった。
この右折した先に光司の実家がある。
このまま真っ直ぐ歩き続ければ、子供の頃からよく通った小さな書店が見えてくるはずだ。
だが書店があったはずの場所には、看板も何もないのっぺらぼうの建物が存在するだけだった。
そうか…閉店したんだな…
あの店主のお婆ちゃんは今でも元気かな?
出版不況と言われて久しいし、小さな書店は厳しいよな、
あのお婆ちゃんも高齢だったしな…
そう思いながら光司はそのまま真っ直ぐ歩き続けた。
書店の二軒隣には、学生時代によく通ったゲームセンターがあったはずだ。
学生の頃、学校が終わるとよく友達と通ったものだった。
しかし、そんなものはもう何処にも存在しなかった。
ゲームセンターがあった場所には、チェーン店のドラックストアが入っていたが、入り口の張り紙を見ると、1週間後にはこのドラックストアも閉店するらしい。
その隣には小さなラーメン屋があったはずだが、そこには中華料理店らしいあの派手な看板は悉く取り外され、ただ廃屋が残っているだけだった。
二軒向こうには、光司が子供の頃、祖母によくオモチャやゲームを買ってもらった玩具店が確かあったはずだが、その場所は建物自体が消滅しており、ただの何もない更地になっていた。
その隣以降は、ひたすらシャッターが降りたままの店が連なっていた。
だがシャッターが降りているだけではないことに光司は気がついた。
かってあったはずの看板が、まるで引き剥がされたように何処にも存在しない建物があまりに多いことに…
店自体が無い?
そう言えば、さっき通った通りのシャッターが降りた店にも看板が無い店が一杯あったような…
商店街一斉の定休日じゃないのか…
シャッターが降りた看板もない建物の向こうに、ようやく昔よく通ったコンビニの建物が見えてきた。
このコンビニは、弁当にレジカウンターで炊飯器から熱々のご飯を入れてくれる家庭的な弁当が人気でよく通った。
だがコンビニ前まで行くと、そこには往時の建物が残っているだけだった。
コンビニの中は真っ暗な状態で、店はとっくに閉店しており、何年も放ったらかしにされた廃墟のようになっていた。
元コンビニの大き目の窓ガラスの向こうにちょうど誰もいない薄暗いカウンターの跡が見えた。
あのカウンターで、弁当に熱々のご飯を入れて貰ったことを思い出す…
だがもう大き目の炊飯器もない。
当然、店には商品も無く、ただがらんどうの何も無い真っ暗な店内が見えるだけだった。
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