それぞれの門出

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「旦那さんと不倫相手はどんくらい続いてただ?」  私は、光輝が画面に夢中になってるのを確認してから小声で尋ねた。 「3年だって」 「さっ……」  私は思わず言葉を失った。 「びっくりだよね。まあちょいちょい怪しいとは思ってたけんさ、まさかそんなに続いてるなんて思ってなかったし」 「そっか……相手から慰謝料とれたんだよね?」 「うん。アイツから100万、相手から200万」 「おおっ……」 「その前に向こうの両親から100万貰ったって言ったじゃん? でもそれは両親からであって旦那からじゃないし、3年は長いし悪質だって話になってさ」 「まあ取れるだけ取れてよかったよ」  律くんいわく、合計300万円程度がやはり最高額であり相場らしい。そう思うと、坂部さんの実力は凄いのだろう。 「んね。これからもお金かかるしさ。もちろん養育費も貰うよ」 「でも、子供は会わせなきゃなんだよね?」 「まあ、あんなんでも父親だからね。光輝が会いたいって言えば会わせないわけにもいかないし」 「そっか……でもまだ向こうも続いてるなら、旦那さんが子供に会うの面白くないんじゃない?」 「そりゃそうだらね。あんなに離婚はしないだの親権はもらうだの言ってたけん、結局相手の女の方が慰謝料高くてアイツと揉めててさ……あの女が別れてくれるって言ってたから待ってたのにって泣き叫んでさ……再婚するらしいから」 「まあ、離婚した挙げ句向こうとみすみす別れるようなことはしないか」 「私と別れて、あの女とも別れたら離婚裁判した意味がないとか意地汚いこと思いそうだからね。まあ、再婚して向こうに子供ができればおのずと子供っちと会う回数も減るら。光輝だって段々色んなことわかるようになってきたし」  光輝の後ろ姿を見ると切なくなる。あんなに小さい体で何を思っているんだろうか。 「その……光輝は大丈夫なの?」 「それが案外平気みたい。向こうの実家に閉じ込められてたって言ったじゃん? 2週間近く私と会えなかったんだよね。そしたらそっちの方が辛かったみたいでさ。  あんなに向こうの親になついてたのに、今じゃ全く行きたがらないよ。あそこに行ったらママに会えなくなるっていう変な先入観が植え付けられちゃったみたいでさ」 「まあトラウマにもなるよね……」 「それに、アイツも光輝達と遊んでやるような父親じゃなかったからさ。休みでもずっと寝ててどっこも連れてってやらないし、お風呂とかも入れてくれるわけじゃないからね。  父親らしいことしてなかったし、あの女と会ってて光輝達が寝てから帰ってくることもあったから。今うちの実家にいるけど、パパの話なんて出てこないよ。子供ながらに触れちゃいけないって気を遣ってるのかも」  そう言って茉紀は苦笑している。光輝もこの4月から小学生になった。私達が想像つかないくらい、大人びている部分もあるのだろうと思うと少し悲しく思えた。
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