それぞれの門出

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ーー翌日  茉紀からの電話。お昼頃にかかってきて、授乳をしながら電話にでた。  茉紀には産まれてすぐ電話をしたのだけれど、落ち着いてからの方がいいよねと言われまだ妃茉莉と顔を合わせていない。 「はーい」 「お、出た出た。出産お疲れー」 「うん。大変だった」 「そうだら。だけん無事に産まれたみたいでよかったよ」  茉紀はそう言って笑っている。出産してバタバタしていたから、茉紀の声を聞くのも久しぶりのような気がした。 「うん。可愛くてしょんないよ。今あまねくんの実家に帰ってきてるんだけど、皆可愛がってくれてさ。とっても楽させてもらってる」 「あまねっち実家は居心地がいいって言ってたもんね。一緒にいてくれるなら安心だね。私も妃茉莉に会いに行こうかな」 「うん! おいでよ! あ……ちょっと守屋家の皆さんに聞いてみないとだけど」 「はいよ。無理なら首すわった頃に連れてきてくれればいいよ」 「多分ダリアさんは歓迎してくれるはず」 「あんた、まだ義母を名前で呼んでるだ?」 「ああ、うん。完全に呼ぶタイミングを失ったよね。でもまあ、奏ちゃんがいるしさ、娘ができて嬉しくてしょんないってわけでもなさそうだし、いいと思う」 「ああ、そう……ねぇ、それよりさ政宗さんって苗字なんだっけ?」 「戸塚さん?」 「そうそう! 戸塚さんだ! 思い出せなくてさ」 「戸塚さんがどうした? あ……光輝か」  私は、名残惜しそうにしていた光輝を思い出した。カレンダーを見れば早いものであれから20日経っている。 「そうそう。時間が経てば忘れるかなって思ってたんだけど、もう1ヶ月も経つのに政宗来ないよって未だに言うんだよね……小学校も始まってあれから新しい友達もできたから自慢したいらしい」 「そっかそっか。光輝可愛いね。それじゃ、あまねくんに戸塚さんの都合のいい日聞いてみるよ。さすがに守屋家でレンジャーごっこはできないけどさ、近くに公園あるから」 「え? 本当? 迷惑じゃないかや」 「迷惑なら断るでしょ。戸塚さんも妃茉莉に会いたがってたってあまねくんが言ってたからさ。時間合わせてくれたらちょうどいいし」 「そう。迷惑そうにしてたら無理しなくていいからさ」 「うん。戸塚さんの方が先輩だから気を遣って無理にってこともないと思うよ。茉紀は土日どっちでも平気?」 「うん。明日の土曜日でも平気」 「おお……急だね。まあ、土日ならあまねくんもいるし大丈夫だと思うけどね」  あまねくんは今日まで有給をとっていて、明日からの土日を終えて仕事復帰の予定だ。確定申告が3月で終わり、その後もごたついていたのにもかかわらず、7日間の有給をとってくれた。  ゴールデンウィークを含めて計2週間近くも休んで大丈夫だったのかと心配になるが、経営者の笠原先生は理解があるようで子供のためならと喜んで有給をくれたそうだ。  あまねくんの環境は本当に恵まれている。彼の人徳がそうさせるのかもしれない。  お昼休憩中だという茉紀の電話を切った後、私は妃茉莉のオムツを変えていたあまねくんに電話の内容を伝えた。
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