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月曜日。朝が弱い旦那様は、今日も眠たい目を擦りながら出勤していった。
朝食後の食器を片付けて、洗濯をする。昨日取り込んでハンガーにかけてあったあまねくんのシャツをアイロンがけした。
一段落ついてから、私は茉紀に電話をかけた。あまねくんに無駄だと言われても、気になって仕方がないんだ。
茉紀には、間違った方向に行ってほしくないし、ハイジさんのことだってどういう関係なのかちゃんと教えてほしい。
「もしもーし。どうしたぁ?」
明るい茉紀の声が聞こえる。茉紀も主婦で子持ちなのだから、私と同じように旦那さんを見送って、家事をしているところだろう。
「おはよう。今大丈夫?」
「うん。子供らまだ寝てるからいいよ」
子供が寝ている内に、できる家事はしておきたかったかななんて申し訳なく思う。しかし、私は気になって気になって仕方がないのだ。
「あ、あのね! ちょっと聞きたいことがあって……」
「何、改まって」
「あのさ……一昨日、茉紀とハイジさんが一緒に歩いてるところ見ちゃったんだけど……」
「ああ、そう。何だ、じゃあ声かけてくれればよかったのに」
何でもないことのように茉紀は笑って言った。この反応をみるに、やましいことはないということなんだろうか。
「えっと、道挟んだ向こう側にいたから……。ねぇ、ハイジさんとはしょっちゅう会ってるの?」
「しょっちゅうじゃないよ。私だってそんなに家空けられないし」
「まあ……そうだよね。じゃあ、何で一緒にいたの?」
「……別に。夜中はさすがに家から出られないから、早い時間に付き合ってもらっただけだよ」
少し考えたように数秒時間を置いて、彼女はそう答えた。
「付き合ってもらっただけって……茉紀、店以外でもハイジさんと会ってるの?」
「たまにね」
「そう……。でも、あんな街中で一緒に歩いてたら、誰に見られるかわかんないよ? 茉紀は結婚して子供もいるし……」
「何、説教するために電話かけてきたの?」
声のトーンが低くなり、明らかに機嫌が悪くなった様子だ。何か、まずい言い方をしただろうかとこちらも動揺する。
「別に説教とかじゃなくて、私は茉紀のことが心配で……」
「まどかに心配してもらうようなことなんてないから。あんたが思ってるようなこともないし。自分のことで忙しいんじゃないの? 他人の心配してる暇があったら、挙式の準備でも進めたら?」
「まあ……そうなんだけど……」
あまねくんが言った通りだ。私が色々な用事に追われているから、彼女も言わないのかもしれない。しかし、それにしたってもっと言い方はあるだろうに……。
「あんたっちは新婚だし、二人の時間も大事なんじゃないだ?」
「もちろん、二人の時間は作ってるよ! でも、ハイジさんてなんて言うか……ほら、女の人好きそうだし……」
「あんた、ハイジさんの何を知ってるわけ? 確かにノリが軽いところもあるし、色んな女の子に声かけることもあるけど、何も知らないまどかにハイジさんのこと悪く言われたくない」
怒っている。これは、かなり。どうしたのだろうか。以前の茉紀なら、「ハイジさんチャラいからねぇ。私もその内ハイジさんとの子供なんかできちゃったりして」なんて冗談の一つも言ったのに。
こんなふうにムキになるなんて、何かあると言っているようなものじゃないか。
「悪く言うつもりはないよ! 私とあまねくんとのことだって協力してくれたのはハイジさんだって聞いたし。でも、あんまり仲良くなりすぎるのはどうなのかなって……」
「何想像してるかわかんないけど、何かあってもまどかとあまねに迷惑かけるつもりはないから」
「迷惑とかっ……」
「麗夢起きたから電話切るよ」
それだけ言って一方的に電話を切られた。モヤモヤした気持ちが更に大きくなってしまった。
やっぱりあまねくんが言ったように、向こうから打ち明けてくれるまでは、何かを言っても無駄なのだろうか……。
久しぶりに茉紀と喧嘩なんてして、私の気分は落ち込む一方だ。喧嘩と言っても、向こうが勝手に怒ってしまっただけだけれど。
茉紀は、ハイジさんのこと何も知らないくせにと怒っていた。彼女は、ハイジさんのことをどれ程知っているのだろうか。
茉紀がダメなら、ハイジさんに直接聞きたい。でも、あまねくんのいない日中はハイジさんが眠っている時間だし、ハイジさんの活動時間は、あまねくんが帰宅する頃。
やめておけと言うあまねくんが協力してハイジさんに連絡してくれるとは思えないし、個人的にハイジさんに連絡をしていると彼に知られれば、俺以外の男に連絡するなんてとむくれてしまうかもしれない。
でも、もし本当に茉紀が不倫でもしていたら……。そう考えると落ち着かない。
茉紀に電話すれば、このモヤモヤが晴れると思っていたけれど、増すばかりだった。
もう一度かけたところで、まともに相手にしてもらえないだろう。
私とあまねくんには迷惑をかけないと言っていたけれど、そんなことが心配で連絡したわけじゃない。
茉紀にはわかってほしいのに……。
午前中いっぱいそんなことを考えていたら、お腹が痛くなってきた。
ちょっと、痛いかも……。
腹部を押さえてトイレに向かう。下着を下ろせば、血液が付着していた。
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