効果覿面

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 私は伊織くんとやり取りしたメッセージを見返していた。 〔まどかさん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。俺の方は大晦日から皆でパーティーです〕  そのメッセージと一緒に送られてきたのは30人くらいの集合写真。お酒のボトルがたくさん並び、皆楽しそうに笑顔を向けている。中には何人も見たことのある芸能人が写っていた。 〔楽しそうだね。私も主人と初詣に行って来たよ。安産祈願もしてきたので、無事に産まれてくるのが楽しみ〕 〔この時期の妊娠は大変ですね。お腹冷やさないように気を付けて下さい。まどかさんとも一緒にお正月パーティーやりたいなぁと思っています〕  早速お誘いのメッセージが入っていたので、〔安定期に入ったから今度は参加させてもらおうかな〕と返信した。 〔本当ですか!? 嬉しいです! 好きな芸能人とかいますか? 知り合いなら、何人か呼びますよ〕  間髪入れずに即レス。  芸能界に興味のある人なら、こんなメッセージをもらったらきっと嬉しいだろうな。私にはファンと呼べる程熱中している俳優さんもアーティストもいない。  面白いテレビが放送されていれば観るし、いい曲があれば聴くけれど、収録の観覧に行ったり、ライブへ行ったりということには昔から興味がない。  恐らく芸能界に興味があれば、介護士を辞めてあのまま芸能界に残ったかもしれない。色んな仕事の話を蹴って地元のテレビ局だけに留まっていたのは、あくまでも施設長の顔を立てるためだ。  いつ辞めてもよかったテレビの仕事。そんな私に好きな芸能人は? なんて言われても困る。 〔特にいないよ。伊織くんの仲の良い人を誘えばいいと思う。あまり気を遣うのも嫌だし〕 〔わかりました! 何人か友人を連れていきますね! 東京までこれますか? 静岡の方が都合がよければそちらに行きます〕  このメッセージが届いてすぐあまねくんに見せた。彼は「東京でもいいんじゃない? たまには」なんて珍しく遠出してもいいと言うので、東京まで行くことになった。  あまねくんと相談して、とりあえず奏ちゃんの出演した番組が無事に放送されたのを見届けてからにしようということになった。7日の放送日後の土曜日に新年会をすることを提案した。  その日しか無理かもしれない。そんなふうに送ると、二つ返事で了承してくれた。 「俺が行くことはぎりぎりまで言わなくていいよ。当日出発する時に連絡しよう。日を改めてって言われると面倒だから」  あまねくんがそう言うので、私は彼の言葉に従った。あまねくんのことが気になって仕方がないのに日を改めてなんて言うだろうかと疑問もあった。  しかし、「怖いもの見たさで遠巻きに見るのはいいけど、実際に会うのは気が引けるんだよ。だって、会って自分の目で確かめたいなら、向こうから旦那さんもどうぞって言わない?」というあまねくんの言葉に納得させられてしまった。  そんなことがあっての1月11日。会場の情報が送られてきて、どうやらとてもいいお店のようだったので、私もあまねくんも少し小綺麗な服装をした。 「まどかさん、いつも以上にうんと綺麗に着飾ってね。普段からうんと綺麗だけどさ。俺はそのまどかさんの夫として行くんだからね。その男が悔しがる顔が目に浮かぶね……」  悪い顔をしているあまねくん。こういう悪どいことを考えている時の顔は律くんに似ている。 「あんまり挑発したりしないでよ」 「大丈夫。まどかさんの立場が悪くなるような目立ち方はしないから。俺も髪セットしてこよっと」  嬉しそうにしているあまねくんは、その足で洗面所へ向かっていった。  大丈夫かな……私、凶だけど。こうなったら大吉のあまねくんに身を委ねた方がよさそうだ。  私も髪を巻き、久し振りにメイクにも気合いを入れた。こんなにしっかりとメイクするのは久しぶりだ。  あまねくんと暮らし始めてからメイクも簡単になっちゃったし……。新婚でこれじゃだめなんだろうけど。  最終確認を終えて、家を出る時に〔主人がどうしても奏ちゃんのお礼も兼ねて挨拶したいって言うから一緒に行くね〕と伊織くんに送った。  いつもなら既読になってからすぐに返信がくるが、既読後ようやく一時間経ってから〔わかりました! 楽しみにしていますね〕と入っていた。 「色んな芸能人呼んじゃってるから当日キャンセルなんてできないんだろうね。葛藤の末、承諾したのでしょう」  私のスマホ画面を覗いたあまねくんは、笑いながらそう言った。会場に誰がいるのかは聞かされていないが、大人数は苦手だと伝えてあるため、多くても5、6人だろう。  私は緊張する胸を押さえ、あまねくんと会場へ向かった。
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