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食事は和と洋とが混じっており、多くの種類が並んでいた。奥さんの手作りもいくつかあったが、お気に入りのお店でオードブルを作っていただいたと言っていた。
おそらくいいお値段のするお店なのだろう。スーパーに売っているようなオードブルとは違う。レストランで食べるような高級な味がした。
「奏さんにもこうして会えて嬉しいです。実は、妻と仲良くなったきっかけがかなんせだったんですよ」
社長の大崎さんはそう言って満面の笑みを浮かべた。話の入り方に皆の視線は奏ちゃんに向く。
話を聞けば、当時18歳の奏ちゃんが雑誌に連載されるようになった頃、奥さんである栞さんは一目見て奏ちゃんのファンになったようだった。
その頃はティーン誌で、色んな系統の10代の女の子が載っており、奏ちゃんは表紙を飾るようになった頃程メイクも濃くはなかったようだ。
高校を卒業する前から、東京に遊びに行っては時折写真を撮られることがあったという奏ちゃん。それらの写真が毎月掲載されるようになり、本格的に高校卒業後にモデル事務所への所属を決めたそうだ。
栞さんはティーン誌からギャル系雑誌に移行した奏ちゃんのことも追いかけ、駆け出しだった頃からSNSも全て目を通していたそうだ。奏ちゃんが出場するステージには何度か見に行っており、前回のパリのコレクション動画も録画して何度も見ていると言っていた。
大崎さんの方は、会社を設立した1年後に自身が手掛けるアプリゲームでホラーのRPGを制作したそうだ。その男性主人公が好きな女の子のイメージをイラストレーターに描いてもらったがどうにもイメージ通りにいかなかったという。
現実の女の子を参考にと手に取った雑誌に奏ちゃんが写っており、大崎さんの思い描くキャラクターとイメージがピッタリ合ったということだ。
早速奏ちゃんをモデルにキャラクターを完成させ、アプリを配信するとぐんぐんとインストール数が伸びた。それは奏ちゃんのおかげなんじゃないかと思えてならないとそこから密かに奏ちゃんを応援するようになったそうだ。
そのアプリを皮切りに、千愛希さんの作った乙女ゲームが人気を得て、会社はどんどん大きくなっていった。
栞さんは大崎さんから依頼を受けたイラストレーターの友人だそうだ。ゲームの人気を集めた祝賀会に参加した栞さんと奏ちゃんの話で盛り上がり意気投合。
栞さんは大崎さんのアプリゲームのファンにもなり、それ以来2人で奏ちゃんの活躍を見守ってきたということだった。
当の奏ちゃんは、2人の間を取り持った形となり、気恥ずかしそうにしている。
仲睦まじい大崎夫婦の様子に、私達は皆笑顔に包まれた。
「いい話ですね」
私は心が暖まるようだった。そして、そのアプリゲームが気になって仕方がない。後でタイトルを聞いてインストールしてみようと密かに思った。
「俺の仕事が成功したのは、奏さんのおかげと言っても過言ではないんですよ。こうして妻と結婚することもできましたし。もちろん、土浦のお陰でもあるけどな」
大崎さんは、しっかりと千愛希さんのフォローも欠かさない。さすがである。
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