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「しかし、不思議な縁ですよね。俺と妻がファンだった奏さんと、土浦がファンのまどかさんがまさか義姉妹になっているなんて」
大崎さんは嬉しそうにワインを飲みながらそう言う。シャンパンを飲んでいたのは乾杯の時だけで、皆個々に好きなお酒を飲み始めていた。
「社長がずっと言ってたかなんせがまさか奏ちゃんだったなんて私は知らなかったですけどね」
千愛希さんはもぐもぐと頬を動かしながらそう言う。
「おかしいなぁ……。君世代でも人気のはずなんだけどなぁ」
「私は今も昔もまどかさんしか見えていないので、流行りには疎いんです」
「そんな自信満々に言われてもな」
大崎さんは苦笑しながら生ハムに巻かれたモッツァレラチーズを口に運んだ。社長と秘書と言うよりも、仲の良い先輩、後輩のような雰囲気だ。
爽やかな大崎さんの人柄と、人見知りのないからっとした性格の千愛希さんの相性がいいのだろう。
こういうビジネスパートナーっていいなぁなんて思っていると、私の向かいに座った栞さんが私を見てにっこりと微笑んだ。
つられて微笑み返すと「お子さん、今何ヵ月ですか?」と聞かれた。
「今7ヶ月です。27週目に入ったばかりで」
「そうなんですね! うちの子は8ヶ月なんですよ。生まれたら同級生ですね」
「あ! 本当ですね! わぁ、嬉しいです。私、ママ友とかできるか今から不安で……」
「そうですよねぇ。私も上の子が生まれる時そうでした。私、実家は神奈川なんですよ。東京に就職して、主人と出会ってから静岡に住み始めたんで、友達も親戚もいないしどうしようかと思ってました」
眉を下げて笑う栞さんはとても可愛らしい。隣では上手に自分で食事をする3歳の息子さん。目元は栞さんに似てまるで女の子だ。
「それは余計に不安ですね……。大丈夫でしたか?」
「はい。ご近所の方もとてもいい方ばかりで、何かと年配の方が気にかけてくれるんです。私も今専業主婦で、ずっとこの子と2人なのであまり他所のお母さんと触れ合う機会がなくて……。
たまに公園で会うお母さん達と仲良くさせてもらってるんですけど、保育園に通ってるお子さん同士が仲良くて、ちょっと距離を感じたりするんです」
少し言いにくそうに彼女は言った。
「やっぱりそんなもんなんですかねぇ……。私も若いお母さんと仲良くてやっていけるか心配で……」
「それはありますよね。でも、何人か産んでる方もいるので、お母さんの年齢もバラバラですよ。4月からこの子もようやく幼稚園に入れるので、そこでママ友ができたらなぁって思ってるんです」
「いいお友達ができるといいですね。栞さんも、お子さんも」
「はい。まどかさんも。是非うちの子と仲良くてしてもらえたら嬉しいです」
「もちろんです! 私もそう言ってもらえて嬉しいです。性別ってもう聞いたんですか?」
女の子が生まれてくると信じて疑わないあまねくんは、性別がわかったらすぐにでも教えてもらうと言っている。中には生まれてくるまで性別を知りたくない夫婦もいるようなので、栞さんはどうなのかと気になった。
8ヶ月であればもう性別もわかっているはずだった。
彼女は嬉しそうに歯を見せて「女の子だったんです。男の子も女の子も両方欲しかったんで嬉しくて」と言った。
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