風雲児

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「旦那さんはさ、その、まだその不倫相手とは続いてるの?」 「さあ、続いてんじゃないの? もう完全に縁を切るからって言って泣きついてきたけど、家出てきちゃったからね。今は1人だしやりたい放題じゃん」 「まあそうだけど……今の状況でも関係続けてたらちょっと人間性疑うかも」 「あのね、3回も浮気してる時点で人間性もくそもないから。しかも今回の相手、私が結婚する時に別れようとしてた原因になった浮気相手なんだ」 「は!?」  私にはもう驚きしかない。同じ相手と何度も浮気するだなんて信じられない。 「そりゃそんな顔にもなるわ。当時は、私と結婚するからって言ってあの女と別れてるから、当然旦那が結婚してることも子供がいることも知ってるわけ」 「うわ、悪質じゃん!」 「だら? てかさ、そんなに何度も浮気する程の相手なら文句言わずに私と別れてその女と結婚すればいいと思わん?」 「そりゃそうだけん……その人は結婚してないだ?」 「今バツイチらしい。あっちもあの女の不倫が原因で別れてるだって」 「……懲りないねぇ」 「もうそこまできたら病気だら。そこで結婚してお互い好きに浮気すればいいと思わん? それが一番平和だわ」 「いや、そういう人ってどうせ次も既婚者にいくよ」  茉紀が言うように病気なんじゃないかと思う。家庭が冷えきっていたことを理由に不倫に移行したのなら、旦那さんも文句を言わずに親権を渡して別れるべきだと思う。  不倫にも純愛はあるのかもしれない。ただ、そう思うのであればしっかり別れてからその恋愛を追及すればいいのだ。 「なんなのかね、結婚って。あんたは幸せそうで何よりだけんね」 「そりゃうちはしたくてしたからね。でも茉紀だって次はきっと幸せになるよ」 「次!? もうしないって!」  私の言葉に、茉紀は目をひん剥いて手を左右に振った。 「なんでよ。あんたモテるだもんで、これから相手探せばいいじゃん」 「はぁ? あんた簡単に言うけんさ、子供2人もいて泥沼裁判になりそうな女だよ? 誰がモテんだよ」 「モテるって! 家事もできて高給取りで美人! 嫁にしたいじゃん!」 「馬鹿言え。またヒモが寄ってくるわ」 「それは言えてる」  茉紀が大きな溜め息をつくと、散々落ちぶれていった茉紀の元彼達のことを思い出し、私は腹を抱えて笑った。  その後も散々茉紀の話を聞き、最後に少しだけ私とあまねくんのノロケを聞いてくれた。  3時間ほど話し込んで、ようやくすっきりしたのか、茉紀はご機嫌で帰っていった。茉紀とハイジさんの仲を疑っていた時には、なんとか茉紀の力になりたいと思っていた。しかし、離婚裁判となれば私にできることはなにもない。  子供を預かっていてあげるわけにもいかないし、旦那さんに親権を譲ってもらえるよう説得しにいくわけにもいかない。  そりゃ、色々落ち着いてから話にくるだろうと、今まで相談されなかった理由がわかった気がした。  ハイジさんはこんな中、いつも茉紀の悩みを聞いてくれていたのだ。時々嫌味だらけで嫌な人だけれど、なんだかんだ茉紀のこともあまねくんのことも面倒を見てくれるのだから感謝しなければいけない。  ただ、私のように茉紀とハイジさんの仲を旦那さん側が誤解していないかだけが気がかりだった。
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