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セカンドライフの歩き方
一
「ウイルスをばらまいてやる」
少年は復讐を誓った。無職無能だと自分を蔑み、嘲笑い、罵って来た人間社会の全てに対して。
ひとは神さまから「職業」と「スキル」を授かって生まれて来て、授けられた職業とスキルに従って生きるといわれており、どの人間がどんな職業やスキルを持っているかは、神社のおみくじを引くとわかるという。
分類学の視点から「職業」と「スキル」は三種類に大別される。
肉体労働に関するもの「体」職業とスキル。頭脳労働に関するもの「心」職業とスキル。高度な技術に関する「技」職業とスキル。例外として極めて特殊な「レア」職業とスキルがそれぞれ存在するが、少年はその何れにも属さない結果だったのだ。
何も書かれていない「白紙」のおみくじである。
これを、神さまから何の職業もスキルも授けられていない「無職無能」と認識した少年の同級生たちは、少年を集団でいじめたのだ。「適応障がい」「悪霊憑き」などと差別用語を浴びせ、罵り、嘲り、蔑んで来た。
少年には好きな異性もいたが「無職無能には将来性がないから付き合えない」という理由でふられ、いよいよ障がい者のレッテルを貼られた少年は、擁護学級に無理やり隔離させられたが、それでいじめがなくなるわけではなかった。
少年は、そんな「職業」と「スキル」がひとの一生をコントロールする社会生活がその頃から嫌になっていた。
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