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二
「なんだ、人間が出て来たぞ!」
意識はないが、少年の耳にはその声ははっきりと聞こえていた。唸るような重機の機械音に紛れ、聞いたことのないしゃがれた男の声だ。
「人間? なんで人間がこんな所に埋まってるんだ? まさか埋葬か。よりによって俺たちのなわばりに、どうしてまた」
先程のとは異なる男の声だ。何かが燃えて焦げたような臭いもする。この臭いは、炭の臭いだ。
聴覚と嗅覚が刺激され、少年はやがて、ぼんやりとではあるが視覚を取り戻した。そこには二体のゴブリンのすがたがあった。どうやら死亡したと思われて、埋葬された場所がゴブリン族のなわばりだったようだ。「キング魔法石採掘所」という看板が目についた。
「ぼくは、転生したのか? キング魔法採掘所って異世界に飛ばされたのか?」
状況が飲み込めないまま、少年は疑問を口にする。
「転生だとか、異世界に飛ばされたとかわけのわからんことを抜かしているな。埋められている間、脳みそが酸欠でおかしくなったのか」
「どうかな。何か身分がわかるものはないのか? 人間なら神社のおみくじ持っているはずだ。どんな職業でどんなスキルがあるかくらいはわかるだろう。人間のボウズ、おみくじを出してみろ」
ゴブリンは少年にそう言った。
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