発見

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「助けを呼ばなきゃ」  美輝は那波を連れて、そこを出た。  公園の周りに人を探す。  道を歩く一人の男性を見つけ、美輝は声をかけた。 「すみません」  振り返ったその人物に思わず驚きを隠せなかった。  根尾界。振り返ったのは彼だった。 「はあ、どうかしましたか」  彼の手元には光る何かが見える。 「あの、それは……」 「ああ、これですか。怖がらせてしまったのなら申し訳ない。これは護身用に持ち歩いてるんです」  折りたたみナイフだった。界は華麗な手さばきでそれを折りたたむと、ジーンズのポケットに入れた。  護身用とはいえど、普段から持ち歩くだろうか。それに、話しかけた時には既に手にしていたが……。  美輝があたふたしていると、界は美輝の後ろに立つ那波に気が付いた。 「あ、吉岡さんじゃないか。奇遇だね。で、どうしたのかな」 「ト、トイレで君田先生が……」  那波は声を詰まらせ、咳き込む。 「先生がどうしたんだい?」  界が困惑の色を浮かばせる。 「実は、先生の遺体を見つけたの」 「……遺体?」  彼は一瞬固まって、それからゆっくりとその言葉を繰り返した。  それから顔を上げて、美輝たちの背後に目をやると、目を細めてそれを見た。  界の視線を追って振り返ると、俯きながら歩く潤の姿があった。  暗い道をこちらへ向かってきている。  まさか……!  何か嫌な予感が首をもたげていた。  超能力と連続殺人事件。 「おい、宮瀬」  界の言葉に潤は足を止め、顔を上げた。 「お前か……こんな夜に一体何の用だ?」  彼は感情のこもっていない声で応える。 「とぼけるな。何でこんなところをうろついてるんだ?」 「散歩だ。よく通る」 「ほう、散歩ね……。そんな嘘に騙されるか、お前がやったんだろう?」 「何をだ」 「殺人だよ」  その単語は美輝たちを凍り付かせた。  この状況下に改めて聞くと、おぞましい言葉だった。 「何度も言うが、俺は人殺しなんてやっていない。じゃあな」  再び歩きだそうとする潤の前に、界が立ちはだかる。その手にはナイフが握られていた。  那波がひっと声を漏らす。 「どこに行こうって言うんだ? 逃がすものか」  潤の表情が強張った。 「おい、物騒な真似はよせ。それをゆっくりと降ろすんだ」  界は潤を睨み付けつつ、ナイフを折りたたんだ。 「吉岡さん」 「……はい?」 「遺体があったって言うのは確かなんだよね?」  界に那波が頷く。 「じゃあ宮瀬、お前にも一緒に来てもらおう」  潤は少し考え込んでから、「わかった。しょうがないから付き合おう」とトイレへ歩き出した。
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