発見

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「ここ」  美輝が清掃用具入れの扉を指差すと、界が扉に手をかける。  トイレは寒かったが、シャツは汗で張り付いていた。 「開けるぞ」界がそっと扉を開いて、その場に固まる。 「まじかよ……」  中を覗いて界が呟き、潤は口元を手で覆った。  ***  その後、警察が来た。  野次馬も次から次へと増え、公園は騒然とした。  界の父親である、根尾鋭介がその場を仕切っていた。年齢は五十代前後で、落ち着いた雰囲気の人だった。  現場からは何も証拠が検出されず、四人は疑いをかけられる事なく解放された。  美輝と那波は親がそれぞれ迎えに来てくれたが、潤は一人、そのまま帰って行った。  美輝はシャワーを浴びながら考えていた。  現場には証拠がない。  このことから犯人を推測すると、どうしても潤に行き着いてしまった。  能力を使って犯行に及んだとすれば、被害者には指一本触れずに済むのだ。  そこで死体を見た潤の顔を思い出す。  彼の態度は至って普通で、芝居をしているようには見えなかった。それに美輝はどうしても、彼が人を殺すとは思えない。  確かに異様な雰囲気な持ち主であり、あの場所にいたという怪しさはある。  しかしながら、彼からはどこか温かいものを確かに感じられる。  これは直感でとしか言いようがないのだが、彼は悪人でない気がしてならなかった。  彼はどんな人なのだろう。  恐怖がにじり寄ってくる一方、好奇心はどんどん増していく。  シャワーの水を止める。  風呂場の天井から滴る水滴が、ぽちゃんと響いた。
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