友人

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 翌日の昼休み、那波を昼食に誘おうと二組の前に行くと、賢也が美輝を見つけて駆け寄ってきた。 「雨川さん。二組に用事?」 「うん、そうだけど……」 「これ宮瀬に渡してくれないか」  そう言って彼が取り出したのは手紙だった。 「直接は渡せないんだ」 「わかった。いいけど……」  急な申し出を不審に思う美輝を残して彼は「頼んだ」とその場を去った。 「美輝、外でお昼食べる?」  教室から出てきた那波の明るい声が耳に入る。  彼女は美輝の手にある手紙を見て顔を輝かせた。 「何それ? ラブレター? 誰から貰ったの?」 「いや違う。佐賀くんから頼まれたの」 「え? 佐賀君から?」 「潤に渡してって……」  彼女は怪訝な顔でこちらを見つめる。 「美輝、宮瀬くんのこと潤ってよんでるの?」 「そ、そうだけど……」  顔が熱くなる。  ばつが悪くなった美輝は歩き始め、那波は横について歩いた。 「彼とはどういう関係なの?」 「仲良くしてる」 「私、実はほとんど話したことないんだけど、どんな人なの?」 「優しくて強い、それで心が綺麗な人だよ」 「へえ、そうなんだ。美輝が言うならそうなんだろうなあ」  那波が信じてくれて嬉しくなった。  那波が親友でよかったと、つくづく思う。
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