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実験
また犠牲者が出た。
ゴミ捨て場で女子生徒二人が八つ裂きにされているのが発見されたのだ。
学校は陰鬱とした空気に包まれ、生徒は他人を信じることが出来なくなった。
結果、やり場のない怒りの矛先は、根尾界の思惑通り、学校にいない潤へと向けられた。
その日、那波と一緒に視聴覚室へと向かっている途中、写真部の梨里子と出くわした。
潤と一緒に出会ったときとは違い、彼女は自信たっぷりな顔で廊下を闊歩していた。
美輝は彼女の前に立ちはだかった。
「何であんなことを……界に写真を渡したの?」
梨里子は眼鏡を上げ、鼻で笑った。
「すごいものだと思ったからよ」
「だからって……撮られて、ばらまかれた方の気持ちは何とも思わないの?」
「美輝、落ち着いて」
那波が不安そうな顔で美輝の袖を引っ張る。
「あいつは殺人鬼よ。ああなって当然」
梨里子の言葉に、美輝は手を振り上げていた。
「美輝! やめて!」
那波が腕にしがみついて涙を浮かべた。
はっと我に返り、腕をゆっくりと降ろす。
全身から力が抜けた。
「あなたもあいつに八つ裂きにされたらいいわ」
梨里子は不適な笑みを浮かべてその場を後にした。
「那波、ごめん」
彼女は美輝に抱きついて泣いていた。
怒りにまかせ、暴力へと走りそうになった自分の無力さが、心に寒い穴を開けた。
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