発見

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発見

 翌日、学校を終えて家に帰るとビデオカメラひとつを手にすぐさま河原へと向かった。  彼はそこにいなかった。やはり騙されたのだろう。  一度会っただけで避けられるとは。  どうしようもない自己嫌悪に陥り、私は足元に転がる石を蹴った。  *** 「私、嫌われちゃったのかな……」  昼休み、美輝は那波と二人、屋上へと繫がる階段に座って昼食をとっていた。 「だから関わるなって言ったのに。変わった人なんだよ」 「うーん、でも気になるなあ」 「何で美輝が彼にそんな夢中になるのかわからない」 「あの漂う魅力がわからない?」 「はあ、もう……。そんな好奇心を持ちすぎると、いつか危険な目に遭うからね」那波はタコさんウィンナーを口にぽいと放り込んだ。「そういえば映画、進んでる?」 「あー、いや、えーっと」  再び犬の映像がフラッシュバックし、美輝は目眩いに襲われた。 「その様子だと、美輝も撮れてないみたいだね。ウチも何を撮るか迷ってるんだよね」 「いや、モデルは決めたんだけど――」 「あなたたち」  突然、頭上から降り注がれた声で、二人は同時に顔を上げた。  そこには、口うるさい事で有名な社会科教師、君田が立っていた。   「何でこんなところでご飯を食べようと思うのかしら? あなたたちのような人が社会をダメにするのよ」  真っ赤に塗られた口紅がうるさく動く。その五十代後半の女性教師が放つ言葉は、いちゃもんをつけているとしか思いようがなかった。 「以後、気をつけまーす」  すっと逃げた那波に、美輝も続く。 「こらっ、あなたたち、待ちなさい!」 「やばいよ美輝、走れっ」  後ろからの声に、二人は廊下を駆けてゆく。
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