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イサナは笑った。心の底から溢れる、抑えきれない高揚が、ときめきが、全身を駆け巡った。
美しい混沌に包まれた終末世界。私は終末世界を巡る行商人。
崩壊の運命に抗う力がなくたって、誰かを救うことができなくたって、帰る場所がなくたって。
有り余る時間を抱えて、旅を続ける。
私だって、主人公だ。
矢絣模様の着物に濃い朱色の袴。黒髪のおかっぱ頭には一輪の椿が咲いて、飴細工のような琥珀色の瞳が強気に前を見据える。
極東の国の生き残り。人魚の肉を食べた少女。
外見からは想像もつかないような、途方もない年月を生きてきた彼女は、これからもずっと、世界のどこかを巡りながら、この終末を傍観している。
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