着物、おかっぱ、異文化交流

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 この世界は、神に見捨てられたらしい。  かつては神の統治下にあり、秩序のある世界だったという。植物が巨大化することもなく、突然変異を起こした動物が人間を襲うこともなく、魔法も存在しなかった、と。  人々はネットワークで繋がり、鉄の塊が大地を走り空を飛び、翼が無くてもどこへでも行けたし、誰とだって言葉を交わせた。  だがある時、神はこの世界を見捨てた。  それにより謎の疫病が蔓延し、山奥では奇妙な生き物が生まれた。ある国は疫病により滅び、ある国は魔物によって滅ぼされた。この世界は混沌に満ちていった。でも、人類は諦めなかった。発展したテクノロジーを駆使し、文明を守った。また、無秩序となった世界から、太古の力が目覚めた。それが魔法だった。テクノロジーと魔法の融合。神の加護を得られずとも、人類の力だけで発達した世界。  神に見捨てられた世界で、その代役を務めるのは、「人間に造られた」神、イザベラ。16歳の少女の姿をしたアンドロイド。彼女はただ人々を見守るだけで、神としての力は持ち合わせていないという。あくまで象徴として存在するだけの神。そう昔から言い伝えられている。彼女が本当に実在しているのかは殆どの人類がわかっていないが、それでも人々は彼女の存在を信じ、信仰している。  そう、これは、神に見捨てられてもなお、生きていくことを選んだ人類の物語。
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