不死の娘、王室の魔剣

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不死の娘、王室の魔剣

 ファーガス王国の中央にそびえる白亜の城。その中を、異国の少女は迷いなく歩く。  __本当に久しぶりだわ。前回来たのは確か十年以上前だったかしら……  大理石の床を、彼女の小ぶりなブーツが軽やかに踏みしめて、透明な音が響く。 「相変わらず静かなところ。」  その呟きも静寂に呑まれて消えていく。  広い城内も彼女にとっては庭のようなものだった。街はどれだけ姿を変えても、王城だけは変わらない。  イサナは行商人としての生活が長い。母国が疫病で滅ぶ前からも、こうして国を渡り歩いて商売をしていた。初めは薬師の仕事の一環として、薬を売り歩いたり薬草を仕入れたりする程度だったが、段々とその商売の幅を広げていった。国が滅んでしまってからは帰る場所もなく、かといって別の何処かに定住するわけでもなく、あちこち国を渡り歩いて商売をして、今に至る。“何百年も”この仕事を続けていれば、もう帰る場所がないことも気にならなくなっていた。
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