三 捜査

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三 捜査

5e311a91-d80a-49a3-90c7-fdb14c328758  翌日、〇四〇八時。  ダナル市の西十キロメートル地点にある、ミルコ・ロドノエフの自宅から一キロメートルほど離れた丘陵地に無音ステルス状態のPVが着地して、ウィングを機体に格納した。 「各PV配置完了」  他のPV三車両が散開して一キロメートル離れた地点からミルコ・ロドノエフの自宅を包囲した。 「我々を監視しているビームはないか?」  マリーはコクピットのシートに座っているクラリスに訊いた。 「監視ビーム無し。探査開始する・・・」とクリラス。 「はじめてくれ」   「家に誰もいない・・・」  クラリスは家に誰もいないのを確認して、地下にあるエルドランからクラッシュを分離する装置と、作業テー部の上に置かれている青い液体クラッシュが詰められた圧入式のペン型カプセルを探査した。  その瞬間、家が大爆発して破壊した。 「センサーが情報収集衛星からの探査ビームを感知して、探査結果を連邦共和国軍へ転送した」とクラリス。 「共和国軍のどこへ転送した?」とマリー。 「ダナル基地です」  そう言いながらクラリスは探査を続けている。  テレス連邦共和国軍ダナル基地はアシュロンから北へ二百キロメートル離れたダナル州ダナルにある。ダナル基地にはテレス連邦共和国軍のユング共和国本部とダナル軍事基地と、テレス連邦共和国軍警察ダナルキャンプがある。 「クラリス。何か残ってないか?」  マリーは4D映像探査するクラリスを見た。 「証拠になる遺留物は破壊に使われた爆薬とセンサーだけです。どっちもダナル軍事基地から盗まれた物です。  センサーが我々の探査ビームを感知して転送した先は。共和国軍ダナル本部です」  クラリスは手を伸ばしてコクピットの空間に現れた映像を走査している。 「共和国軍ダナル本部のその先は?」 「ニールス・ランド少佐。  少佐は、テレス帝国軍亜空間転移警護艦隊タイタンの旗艦〈タイタン〉で、作戦士官長を務めた男です。当時の階級は大尉。上官はアトラス・オラール少佐。  ニールス・ランド少佐はウィスカー・オラール中将の親族です」とクラリス。  カールの3D映像がコクピットの補助シートに現れた。 「テレス帝国軍は一人残らず消滅したはずだ。生き残りがいたのか?」 「帝国軍の残党は全員捕獲だ!ヤツラ、今どこに居る?」とマリー。 「共和国軍ダナル本部の作戦司令部にいます。  ランド少佐をフォクスレイ中将に逮捕させますか?」  アレックス・フォクスレイ中将は、ここユング共和国に駐留するテレス連邦共和国軍の総司令官だ。クラリスはユング共和国に駐留しているテレス連邦共和国軍の指揮系統が乱れないか気にしている。 「ああ、緊急にそうしてくれ」  マリーの決断は硬い。クラリスはマリーの指示を了解した。 「了解。ただちに指示します」  クラリスはその場で、ニールス・ランド少佐の逮捕をフォクスレイ中将に指示した。    くそっ、やっかいなことになったぞ・・・。一介の犯罪組織なら、コンバットが自由に取り締まれる。テレス連邦共和国軍警察重武装戦闘員・コンバットの立場がテレス連邦共和国軍より上だが、それでも共和国軍内はコンバットの自由が利かない・・・。マリーは捜査をどう進めるか、考えがまとまらない。  ダナル市は、ここミルコ・ロドノエフの自宅から東へ十キロメートルの地だ。  テレス連邦共和国軍ダナル本部はダナル市の北へ十キロメートルほど離れた地にある。 「PVはそのまま待機。  クラリス。フォクスレイ中将はニールス・ランドの逮捕要請を承諾したか?」 「応答無し。要請を無視してるわ。  こういう場合は、強硬手段に出るか、上から圧力をかけるか、どっちにしますか?」  コクピットのクラリスはそう言うが、どうするか意向は決っている。 「上から圧力をかけて、強硬手段に出よう。  アントンに、フォクスレイ中将とランド少佐の逮捕を要請してくれ」とマリー。  アントンは、テレス連邦共和国議会対策評議会の評議委員長、アントニオ・バルデス・ドレッド・ミラーだ。 「了解。緊急回線に評議委員長が応答したわ」  クラリスの言葉ととも、コクピットにアントニオ評議委員長の縮小3D映像が現れた。 「マリー。事情はクラリスから聞いた。フォクスレイ中将をただちに捕縛監禁させた。  ニールス・ランド少佐と、容疑者二名が逃亡した。  フォクスレイ中将は共和国軍ダナル本部の尋問室にいる。尋問してくれ。  ジョーに惑星カプラムの状況を調べてもらう。  惑星テスロンは私が指揮して捜査する。  惑星ヨルハンはその次だ」  ジョーはテレス連邦共和国ギルド・ドレッド商会CEOジョー・ドレッド・ミラーだ。テレス連邦共和国を樹立した人物のひとりだ。 「了解」  マリーの返答とともに、頼むぞ、と言って評議委員長・アントンの3D映像が消えた。 「全機、共和国軍ダナル本部へ急航しろ!」  ミルコ・ロドノエフの自宅を一キロメートル離れた地点から包囲しているPV四車両がステルス態勢で、テレス連邦共和国軍ダナル基地へ緊急飛行した。
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